王子様のご執心2

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「……俺の家、来る?」 「……うん」  連れてって、と言うと里村は一度きつく俺の手を握り、ドラッグストアを出る。電車に乗り、俺の自宅最寄り駅とは反対方向にふたつ行って降りた。駅から五分歩かないくらいで里村の家に着いた。 「大丈夫。誰もいないから。ってさっきも言ったよね」 「うん……」  いないとわかっているから緊張してしまうというのもある。本当にふたりきりだ。  里村の部屋に入ると同時に抱き寄せられ、どくんと心臓が高鳴った。 「章人、キスしていい?」 「……うん」  ふに、と唇が重なって軽く啄まれる。背伸びをして里村の首に腕をまわし、抱きついてみる。唇を舐められたのでおずおずと口を開けると舌がさし込まれた。口の中を探られて脚に力が入らなくなっていく。 「待って、里村。立てなくなりそう……」 「ほんと可愛い。支えてあげるから抱きついてて」 「ん……」  さらに身体を寄せると腰に硬いものがあたり、どきりとする。こんなにも興奮してくれているのだとわかり、俺の身体もどんどん熱くなっていく。里村に寄りかかり、身体を支えてもらいながら唇を何度も重ねる。 「怖くない?」 「……怖くない、けど」 「けど?」 「緊張してる」  吐息が触れ合う距離で見つめ合うと、またキスで唇を塞がれた。息をつく間もないキスにぼうっとなってきた。 「里村……」  頬を撫でられ、優しい笑みが心をほぐす。次第に緊張よりも欲情に燃えていく。 「ベッド行こう」 「べっど……」  一瞬ベッドがなにかわからず、首を傾けてしまう。里村は苦笑して額にキスを落とした。 「キス、気持ちいい?」 「ん……」 「俺も」  これもおそろいだ、と思ったら胸が甘く締めつけられる。もっとふたりで気持ちよくなりたくて里村の胸に頬をすり寄せる。手を伸ばしてそっと熱く主張している昂ぶりを撫でてみると、里村はぴくんと肩を揺らした。 「こら。章人、悪戯しないで」 「んぅ……ぁ」  深いキスで意識を逸らされ、また里村に抱きつく。そのままひょいと抱きあげられてベッドに運ばれた。  ニットを脱いだ里村が覆いかぶさり、俺の服をぎこちなく脱がせていく。初めてなのか、と思うとどうしようもなく高揚した気分になり、なにもされていないのに下半身が熱くなった。 「章人、肌も綺麗」 「そんな見るなよ……」 「やだ。見せて」  身体を捩ろうとしても許してもらえず、両手をシーツに押さえつけられて身体を晒す恰好にされてしまう。視線に熱を感じて頬も肌も火照っていく。おもむろに肌に顔を寄せた里村がキスを落とし、つう、と舌を這わせた。 「っ……」  濡れた感覚に身体が跳ねる。舌で肌をなぞり唇で啄むことを繰り返した里村は俺を見て目を眇める。まるで眩しいものがそこにあるかのように。 「章人、好きだよ」 「……うん。俺も、好き」 「ありがと」 「あっ」  胸の突起の形をくるりと舌でなぞられ、恥ずかしい声が出た。突起をねぶられ、舌で転がされると腰がじくじく疼く。芯をもってぷくりと育った尖りを甘噛みされて、また自分ではないような声が出た。 「やだ、里村……恥ずかしい……っ」 「可愛いよ。大丈夫」 「あっ……変な声、出る……っ、ぅあっ……」  身体が熱いし吐き出す息も熱い。燻る欲望が身体の奥で出口を求めて暴れている。胸の突起など普段は意識もしないところなのに、里村の舌で転がされ、指でつままれると鈍い快感が湧き起こり戸惑ってしまう。 「さ、里村のも、する」 「俺は遠慮するよ」 「ずるい……。俺ばっかり恥ずかしい」  里村の下着を持ちあげている猛った熱に触れると、また里村はぴくんと肩を揺らした。これなら対抗できそうだ。 「章人……」 「だめ?」 「……あんまり強く触られたらすぐいきそうだから」 「じゃあ優しく触る」  壊れものに触れるように撫でると、里村が熱い吐息を漏らす。上気した頬と熱に浮かされたような瞳が色っぽくて目が離せない。じっと見つめると里村は照れたように笑って俺の鼻をつまんだ。 「ほんと、今日の章人可愛すぎ」 「里村も可愛いよ」  鼻をつまんでいる手を引き寄せてその手のひらにキスをして頬をすり寄せた。 「ひあっ……」  里村が唇で下着越しに昂ぶりに触れ、頬を寄せていた手を思わずぎゅうっと握ってしまう。するりと下着が脱がされ、露わになったものはすっかり形を変えて熱くなり、先端からは雫が溢れている。 「舐めていい?」 「だ、だめ……絶対だめ! ああっ……」  だめだと言っているのに里村は先端を口に含み、そのまま根元まで咥えた。熱くぬめる感覚にくらくらする。軽く吸われると腰が跳ね、唇で強弱をつけて扱かれるとうわ言のような喘ぎが次々漏れる。呼吸がどんどん乱れていき、身体や頭の中まで熱い。濡れた音をたてて舐められ、もう許してと何度も首を横に振る。 「だめ……いくから、だめ……だめ」  離してほしくて里村の髪に指をさし込むけれど、逆に深く咥え込まれて太腿の内側が引き攣る。つま先でシーツに皺を作りながら舌の動きに全神経が集中してしまう。里村が舌や顔を動かすたびに快感が生まれ、俺を追い詰めていく。 「あ、もういく……いく……っ」  つま先がぴんと伸びて喉が反る。奥深くまで咥え込まれた昂ぶりが弾け、里村の口内に欲望を吐き出した。里村は白濁をこくんと嚥下し、濡れた唇を舐める。 「ば……馬鹿、なんで飲んでんだよ……」 「可愛い章人を全部味わいたいからね」 「……馬鹿」  腕で顔を隠して呼吸を落ち着かせようとするけれど、里村の表情があまりに色っぽくてどんどん興奮してしまい、息が乱れてしまうばかりだ。  頬を撫でられてぞくりと肌が粟立つ。それだけの刺激も快感で、欲を放った昂ぶりがまた硬度をもっていく。 「章人、そのまま力抜いてて」 「ん……」  脚の間に手が滑り、奥まったところを撫でる。入口をなぞっていた指先が中に入り込み、違和感に眉をひそめると眉間にキスが落ちてきた。 「痛い?」 「痛くはないけど、変な感じ……」 「俺も変な感じ。章人とこうなってるなんて」  あでやかな笑みに胸がきゅうんと絞られる。こんなに綺麗に微笑んでくれる里村は、それだけ俺が好きなのだ。素直になれない俺の気持ちが伝わるだろうか、と真似して笑って見せるけれどうまくできなかった。 「可愛い」 「可愛くない」 「章人だね」 「俺以外に誰がいるんだ」  やはりじょうずに素直になれなくて、いつもの会話になってしまう。先ほどまではまだましだった気がするのに、少しでも「素直にならないと」と意識すると逆に素直になれない。どこまで俺はひねくれているのだろう。  それでも里村はキスをくれて、彼のようにまっすぐに気持ちを伝えられたらな、と悔しくなる。 「大丈夫? 指増やしていい?」 「……聞かなくていいよ。そういうの」 「聞かないと章人の気持ちがわからないでしょ」  あんなに嫌なやつだと思っていた里村のいいところを今ではたくさん知っている。強引なようでいて俺の気持ちをきちんと大切にしてくれて、優しくて、でもちょっとずるくて。すべてを受け止めたいと思うようになるなんて、想像もしなかった。 「あっ……待って、そこ……っ」 「痛い?」 「違うけど、だめ。なんか、おかしい……」  内襞を撫でられて言いようのない感覚がじわじわとせりあがってくる。同じところを繰り返し撫でられると背筋に鋭い快感が走った。  指先が動くたびにあられもない声が唇から次々零れる。自分だけ乱れているのが恥ずかしくて手を伸ばす。 「章人……っ」 「俺だけ、やだ……」  里村の昂ぶりに触れるとそこはさらに硬く質量を増していた。形をなぞっているとなぜか俺が気持ちよくなってくる。里村が快感を受けとっていることがわかると俺も気持ちよくて、結局俺だけ乱れている。 「ごめん、章人。可愛すぎて我慢できないから挿れていい?」 「……聞かなくていい」 「聞かないとわからないって言ったでしょ。無理ならやめるから」  指が抜かれ、甘いキスを何度もくれる。腹を撫でられ、ぞくりとして里村の舌を噛みそうになった。 「やめとく?」  まだそんなことを言う里村にいら立ちを覚える。 「……馬鹿」 「章人?」 「馬鹿、馬鹿、馬鹿、ばーか!」  しがみついて俺から唇を重ねる。お願いするように腰を擦り寄せてぎゅうっと抱きつくと「うん」と囁いた里村が髪を撫でてくれる。 「……馬鹿……」 「ほんと。馬鹿だね、俺。こんなに章人が欲しがってくれるなんて思わなかった」  脚の間に身体を入れた里村が「あ」と思い出したようにドラッグストアで買ったコンドームをとり出す。着けているところをまじまじと見てしまった。 「そんなに見られたら困るな」 「どういう意味?」 「もっと興奮するってこと。章人にそんなに可愛い表情で見られて興奮しないわけない」  少しだけ調子が戻ってきたような里村の言葉に笑ってしまう。  覆いかぶさった里村が頬にキスをくれて、それから昂ぶりがゆっくり滑り込んでくる。指とは違う大きさと熱さに息が押し出される。シーツを掴むとその手に里村が手を重ねた。 「大丈夫?」 「だいじょ、ぶ……」  強がりを見透かされて、なだめるように髪を撫でたりキスをくれたりする。そうしていたら圧迫感以上の幸福が湧きあがり、一気に限界へと追いやられた。 「入ったけど、痛くない?」 「……絶対動くな」 「痛いの?」  心配そうに顔を覗き込まれ、ふいっとそっぽを向く。痛いのではない。 「……違う。もういきそうだから」 「えっ」 「だから絶対動くな」 「……」  きょとんとした後、里村がゆるりと腰を動かすので、慌てて両脚をその腰に絡めて動きを止める。 「動くなって言ってんだろうが!」 「はは。ごめんね、すごく可愛いから」 「悪かったな、簡単にいきそうになって!」  頬が熱くて腕で顔を隠すけれど、すぐはずされてしまった。頬や額にキスをされて、少しささくれてしまった心が癒される。 「悪くない。何回でもいって?」 「あっ……待って、ほんとに……っ」  ぞくぞくと湧き起こる感覚にはくはくと息を吸ってもうまく呼吸ができない。腰を掴まれ、奥を探られたらびくんと身体が跳ね、白濁が噴き出した。 「っ、すごい……きつ……」 「は、あっ……あ……。馬鹿、だからだめって……」 「だめじゃないよ。大丈夫」  目尻の涙を舐めとり、ちゅっと音をたてて唇を寄せる。頬や顎、鼻の先など顔中にキスをされているうちにまた身体が熱くなっていた。里村の腰に絡めた両脚に力を込めて引き寄せるようにする。 「動いていい?」  耳を舐めながら聞かれてこくんと頷く。全身どこを触られても気持ちよくてぞわぞわする。 「里村……好き」 「俺も章人がなにより好きだよ。だから可愛いとこいっぱい見せて?」 「ああっ……あ、あっ……あう……」  どこを擦られても撫でられても気持ちよくて、中も肌も過敏に快感を拾い困惑する。指先にキスをされただけで熱がずくんと沸きあがった。再び角度を変えた昂ぶりはしとどに濡れている。 「里村、好き……好き」 「うん。好きだよ、章人」 「あ、あ……好き、好き……っ」  もっとうまく気持ちを伝えたいのに、「好き」しか口から出てこない。そんな俺を心底愛おしそうに見つめる瞳は愛情に満ちていて、俺もそんなふうに思いを分け合いたいともどかしくなる。 「はぁっ……あっ、またくる……」 「うん。大丈夫、俺もだから」 「里村……っ、……キスして……」 「俺もキスしたい」  唇を食まれ、舌が口内で暴れる。息苦しいくらいなのに気持ちよくて、拙く舌を動かすけれどすぐに動かせなくなった。迫りくる快感の波に溺れてしまったから。 「んっ……ぅん、ふ、ぅ、んん……っ」 「っ章人……」  きつく抱きしめ合ってふたりで頂に昇る。中で脈打つ昂ぶりを感じて、自分でも驚くほどの充足感に満たされる。汗ではりついた前髪をよけて額にキスをくれる里村にも同じようにキスを贈った。どちらからでもなく唇を重ねて、乱れた吐息を貪り合う。舌先をちゅっと吸われたら腰に淡い快感が響いた。
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