第14話

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第14話

「花嫁姿の幽霊…」  女性は、帰り道の国道で花嫁衣裳を着た女性が佇んでいるのを見た。  それは有名な噂で、雑誌やネットでも語られていたものだった。  まさか。本当に居るとは、思わなかった。 「いや、出没地はこの国道じゃなかったはず」  花嫁はただ車のライトに照らされ、白光りしては沈んでいく。 「アレに関わるのは危険だよな」  自転車を押して、引き返した。そして何事もなく帰宅できた。  廃墟化したアパートの一室で、パンを食べる。味を確かめる事もなく無心に口に運んでいると、ドアがノックされた。 「こんばんは」 「…夜遅くにどうしたんですか」  女子高生が息を切らして、玄関前に立っていた。 「不法侵入ですよね?それ」 「あー…家に帰りたくないんですよねえ」 「とにかく、呼ばれてるんですよ。あの人が事故に遭ったって」 「アレが?」 「それで…色々あったんです。で、あの人が貴方を呼べって」 「はあ…」  仕方なく腰を上げ、所持品をバッグに詰め込む。「じゃあ、行きましょうか」  帰り道通った国道の、花嫁姿の幽霊がいた場所に警察たちが現場検証をしていた。 「貴方がこの方の親類ですか」  刑事が淡々と尋ねてきた。 「ええ、遠い親戚です」 「彼女、事故にあったのに無傷でしてね。奇跡的に助かったんですが、第一発見者になりまして」 「なるほど」 「女の人が死んでたんですよ!」  リクルートスーツの女性が横入りしてきた。 「そうなんですか」 「はい。まあ、詳しい事は言えませんが…」  チラリと国道沿いの草やぶを見つめ、刑事は言う。暗くて状態は分からなかった。  あれは、あの女性は有名な幽霊ではなかったのだ。死体を伺う事は叶わない。  昔の噂に汚染され、屈折して幽霊を見てしまったのかもしれない。  お互い認識しなくてよかった、と心の内でホッとした。
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