わん(犬)

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わん(犬)

「あ、犬!」  道を歩いていると犬が歩いていた。「犬!犬、待て!」  リクルートスーツの女性は手を叩いて追いかける。 「あ、居なくなった」  角を曲がると先程の犬は姿を消している。首輪も付けずに、あの犬はどこへ行ったのか。 「まーいいか。犬なんてどこにでもいるしな…」 「やだ、野良犬?」  いつの間にか、背後には制服を着た女子がいた。「野良犬なんて、今のご時世いないって」 「あんたさぁ、昼間からここら辺ウロウロしないでくれる?不審者だって有名なんだけど」 「エッ仕事ないし、ウロウロするしかないじゃん」 「…あー、最低。話しかけなきゃ良かった」  女子高生はため息をついてこの場を去ろうとする。 「ね、何で話しかけようと思ったの。教えて!」 「は?!だ、だって…あの犬、頭、と、尻尾がなかったから」 「えーーーー!!!!!!今すぐ追わなきゃ!」  バタバタと駆けて行った女性に、彼女はまた落胆した。 「ハア…何で話しかけちゃうんだろう…」
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