あめ

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あめ

 陸橋の下にある短いトンネルに書かれた落書きを眺め、雨が止むのを待っていた。手向けられた古びた花たばが雨粒に濡れる。  通り雨だから、と待っているのに酷くなっていく。女性はスマホを取り出し、雨雲レーダーを確認した。 「ゲリラ豪雨かあ」 「こんにちは。傘、ないんですか」  ビニール傘を片手に歩いてきた女子高生に、彼女は振り向いた。 「天気予報で大気が不安定になるってやってましたよ」 「ああ…傘、なくしちゃうんですよ。だから持つのやめました」 「変わってますね」  苦笑した若者に、こちらも笑うしかなかった。 「あれ、いつものアレいないんですか?」  やけに静か、と周りを見わした。 「現れる時とそうでない時がありますからねえ」 「は、はあ…まあ、いない方が静かで楽ですもん」 「お前らーーーーー!!!」 「ゲッきた」  畑からリクルートスーツを着た女性が走ってきた。「悪口言うなーーー!!」 「どっからきたの?!」 「それ──げぎゃア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛?!」  いきなりの落雷に、ヤツは打たれ、眩く光る。一瞬の破裂音に耳がやられた。「きゃあああああ!!」 「天罰、か」 「いたたたたた!!?な、なに?!ひどくない???こんわく!」  黒焦げになった女性は座りながら喚いた。 「い、生きてる…」 「天罰いうな!」 「いや、あれは捕食ですね。相手が悪かったようだな!」  空を睨みつけると、1ヶ所、変にどす黒い雷雲が不自然にゆっくりと移動していった。 「は?は???」  目を丸くした女子高生に、女性は花たばを指さした。 「1週間前、ここで落雷があったんですよ」 「あー、あの日、落ちてたかも」 「貴方、狙われていたんですよ」 「えっ」 「たまにさあ、傘に落ちるって言うし」  破けたリクルートスーツを正しながら、付け加える。 「またどこかで落とすんでしょうね。アレは」 「…。あの、怖いから一緒に帰ってくれませんか…」
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