第8話

1/1
前へ
/74ページ
次へ

第8話

 地面に『タ』が落ちていた。文字だ。  リクルートスーツの女性は『タ』を拾うと、ジロジロ眺めた。どう見ても文字に見えた。 「へ〜~、文字って落ちてるんだ」  なんとなくラッキーな気持ちになり、ポケットにしまう。 「食べると美味しいのかな〜?」  しばらく行くと、『ヒ』が落ちていた。 「ひ、た、ひ」  タとヒ。 「うーん、アレだな、来たな、アレ」  歩くのをやめ、しまっていた『タ』を取り出した。「くっ…好奇心を利用した…巧妙なトラップだ」 「元の場所に戻しておこ」  ザリ、と靴が何かを踏んだ。『一』だった。 「あら」  パシュッ。  頭に弾丸が貫通した。hit! 「クマを仕留めたぞ!」猟友会の人達が駆け寄ってきた。 「どーみてもヒトでしょーーーーーが!!!」 「うわ!やばい!人間撃っちまった!」 「どーします?」 「いやいや!謝れや!!」  女性はまだ『タ』と『ヒ』と『一』があるのに気がついた。「んぁ」  近くにいた猟友会のおじさんがいきなり倒れた。クマだった。「クマだ!」  仲間たちが慌てて、銃を発砲する。おじさんは顔がえぐられていた。  文字は、なかった。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加