青い夏は、透明の味がした

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夏希が玄関から出ていって暫くすると、再びチャイムが鳴った。 誰かと思い、裕が扉を開けるとそこには中年の女性の姿が。 「叔母さん…」 「裕くん!」 彼女は近所に住む裕の叔母だ。 時々裕を心配して家に様子を見に来る。 「やっぱり……」 裕の顔を見るや否や、叔母は裕の両肩を持ち、辛そうな声で叫んできた。 「こんなにやつれて…… 裕くん、()()()()()()()のでしょう!?」 その言葉に裕は目を一瞬だけ見開く。 しかし、すぐに落ち着きを取り戻し、こう返した。 「何言ってるんですか、叔母さん。ちゃんと食ってますって」 「じゃあ何でこんなにげっそりしてるのよ?鏡見てみなさいよ!」  玄関の壁に掛かっている鏡に目をやると、そこには青白い顔をした自分が映っていた。 「夏バテでちょっと食欲無かっただけだよ。心配しないで、叔母さん」 「裕くん……」  二人がそんな会話を交わしている頃、夏希は家に向かって歩いていた。頭の中は、裕のことで一杯だ。 (裕、やっぱり変だよね……)  裕とは幼い頃からの付き合いだ。  少しでも具合が悪かったり、悲しんでいたりしたらすぐに分かるはずなのに。 (そう言えば、いつからだろう?裕がおかしくなったのは…昨日の公園から?それとも?)  考えていると、突然頭の中がズキンと痛んだ。 「痛っ」  慌ててこめかみを押さえる。  私も風邪引いちゃったのかな?……
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