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翌日、夏希は再び裕の家に向かっていた。大丈夫だと言われたけれど、やっぱり心配だ。
邪魔になりそうならすぐに帰ろう……そう思いながら裕の家の近くの角を曲がる。
あと数メートルで玄関というところで、誰かが話す声が聞こえてきた。
お客さんかな?と思い、陰でこっそり聞いてみる。
「だから叔母さん、昨日も言ったとおり、俺は大丈夫だって」
どうやら裕の家に叔母さんが来ているようだ。
「いいえ、大丈夫なんかじゃないわ!
あなたは今、病気なの!一緒に来なさい!」
彼女も裕を心配している。でも、裕は頑なにそれを拒んでいるようだ。
ここは自分も叔母さんに加勢して、何とか裕を病院に連れて行った方がいいのではないか。
――そう思った夏希は玄関への一歩を踏み出そうとする。
その時だった。
「やっぱり、あの子……夏希ちゃんのことが原因なのね」
……ん?
「違う!夏希は関係ない!」
……何故私の名前が出てくるのだろう?
「違わないわ!……お願い、目を覚まして!
じゃないと、あなたまで…あなたまで死んでしまう!!」
「うるさい!!夏希は死んでなんかいない!……死ぬわけがないだろ!!!」
……!!!
――どうして二人は私が死んだような話をしているのか。
私はここにいる。
ここにいるじゃない!
思わず身を乗り出し玄関に駆け寄る。
そのタイミングで、裕に突き飛ばされた叔母が、こちらに倒れ込んできた。
「きゃあっ」
しかし、叔母は夏希の体をすり抜け、そのまま尻餅をついてしまった。
「ごめん…」
夏希に対してか、叔母に対してか分からない裕の謝罪の言葉。
叔母は悲しそうに「裕くん…」と呟くと、背を向け歩いていく。
「夏希……聞いていたのか」
裕は夏希のことをちゃんと認識している。しかし、叔母には見えていないようだった。
「裕の叔母さん、私に気付いてなかった……それに、さっき透けて……」
そう言いかけた時に、また頭がズキンとした。
「痛ぁ……っ!」
思わず頭を押さえて屈み込んだ瞬間、忘れていた記憶が勢いよく流れ込んで来た。
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