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4月1日、わたしが素直になれる日。
わたしの目の前で幸せいっぱいに、無邪気に微笑む幼馴染みのあんたに告げる。
「ねぇ、直樹。わたしね、直樹のことが好きなの。昔から大好きなの、愛してるの」
あんたは目を大きく見開いて固まってしまう。だけど、直ぐにはっと何かに気がついて……そして笑うの。
「ビビった~。危うく騙されるところだったよ。今日はエイプリルフールか! でもそーいう嘘は危ないからやめとけよ!」
わたしもあんたにつられて笑う。
「分かってるわよ。あんたにしか言わないわよ、こんなこと。……あんたにしか、ね」
そう、明日わたし以外の女と結婚してしまう幼馴染みのあんたにしかね。
「……結婚、おめでとう」
机の下の手をぎゅっと握りしめ、わずかに震えた声でそう言った。するとあんたは照れくさそうにやっぱり笑う。
ああ、その笑顔、やっぱり大好きだなぁ。
4月1日、わたしが素直になれる日。
だけど、もっと早く素直になっていられたら……あんたの隣にこれからもわたしは居続けられたのかな?
《終》
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