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プロローグ→
あたしは男の子が苦手だ。
幼稚園の頃。
「みてみてー」と笑顔で走ってきた男の子が閉じた手を目の前で開くと、カエルが飛び出してきた。
見事にあたしの顔面めがけてジャンプしてきたカエル。
遠く、たくさんのケラケラと笑う声が聞こえた気がして、失神した。
小学校の頃。
ちょっと優しいなと思っただけなのに、「好き」と勘違いされて女の子たちがおせっかいであたしとその男の子をくっつけようとした。
いつも二人きりにされていたら、ある日その子が手を繋いできて、身体中がゾワゾワした。
それ以来、隣の席にいることすら気分が悪くなって、あたしはその男子どころか、男の子と話せなくなった。
中学校では、なぜか告白されることが増えた。だけど、半径二メートル以内に入り込まれると悪寒が走ったから、全てお断りし続けた。
そして、少しでも何かあれば一つ年上の慎一郎お兄ちゃんの教室へ行き、報告をした。
周りの子達からは、仲睦まじい兄妹だと微笑ましく見られていたけれど、笑顔の裏では、「お兄ちゃんは、あたしを守るため」、「あたしは、あたしに近付く男子を抹消してもらうため」に告げ口をしにきているのだった。家に帰ってからでは手遅れになる可能性もあるからだ。
実際、手遅れになりかけた時に近づいてきた男子はあたしの中のブラックリストに記してある。
だから、本当に男子が苦手すぎるあたしは、毎秒ことあるごとに授業中でもメッセージでお兄ちゃんとやり取りをした。
そのおかげで、あたしに変な男子が寄り付くこともなく幸せな日々を送っていられた。
今までは……────
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