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だから、たぶんお兄ちゃんは『一緒に遊ぼうよ』って、声をかけたんだと思う。
あたしは兄の背中に引っ付いて、イブちゃんの出方を伺うばかり。何度か公園に通うと、イブちゃんもすっかり慣れてよく笑ってくれるようになった。そして、今度はあたしの家に来ることも多くなったんだけど。
「優乃んちにはすごい世話になったよな。見知らぬ俺を、いつも嫌な顔ひとつしないで歓迎してくれて」
あたしの両親は共働きで家にいることは少なかった。兄がしっかりしていたのと、兄のことが大好きで片時も離れずにくっついているあたしを見て、両親はあまり干渉せずあたしたちの好きなように自由にさせてくれていた。
だから、イブちゃんをうちに連れてきていた時も、当たり前のように歓迎して、なんでもあたし達と同じようにさせてくれた。だからかな。あたしにとってイブちゃんはお姉ちゃんみたいな存在だったんだ。
まぁ、今となっては〝お兄ちゃん〟だったのだけれど。
チラリとイブちゃんを見上げれば、少し寂しそうに笑うから、あたしもつられて笑顔を作る。
「また急に連れ戻されるとか考えもしなくてさ。まぁ、反抗期ってやつだよね。めちゃくちゃやったなぁ……」
遠い目をしながら、何かを思い出しているのか、感慨深い表情で頷くイブちゃん。あたしは苦笑いをするしかない。
ああ、それであんな噂が……っていうか、その顔は噂が噂じゃなくて本当だったってことになるけど、大丈夫なのかな。
「ほ、本当に、高校生相手に喧嘩して勝ったとか、先生と……その、か、関係を持ってた、とか、色々、全部、本当なの?」
つい、心配になって聞いてしまった。
見上げていたイブちゃんの顔がこちらを見下ろし、眉根を寄せる。
思わず、ひっ! と背筋が凍る。
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