→あの日のイブちゃんのこと

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 美しい容姿で抜群にモテたイブちゃん。告白は日常茶飯事で、仕方なく付き合った子も何人かいたらしい。でも、どの子とも長続きしなかったと、ため息混じりに話し始めた。 「俺の心の中では、いつも優乃の笑顔が離れなかったから」  そう言ってあたしの方を見て微笑むイブちゃん。天使の様な優しい顔で、心がきゅんとした。だけど、すぐにまた俯いてしまう。 「学校に行くと、俺に対する執着が日に日に増していってさ。いつでもどこにいても監視されている様な気がして、落ち着かなかった。通学路でも、途中で必ず誰かしらに声をかけられる。放っておいてほしいのに、愛想笑いするのにも、ほとほと疲れていたんだ」  悩む表情をしているイブちゃんの横顔は、やっぱり綺麗で、瞬きすらも見逃したくないくらいに美しい。風に揺れる前髪を押さえて耳にかける仕草に見惚れていると、悲しげに伏せていた瞳がキラリと鋭くなる。 「そんな毎日に飽き飽きしていた矢先に、彼女を俺に取られたとか濡れ衣着せて挑んでくる奴らが現れ始めた。もちろん、そんなことしねーし、するわけない」  足元の小石を見つめて、ため息を吐き出す。 「勝手に、二股かけられてたとか、身に覚えのない話されて。興味も湧かなかったし、初めは無視していたけど、家に帰れば母親は男連れ込んでて帰れないし、学校では執拗にかまわれる。どこにも居場所がなくて、イラついて、だったら売られた喧嘩は買ってやるって思って殴り飛ばしてたら、あんな噂が立つ様になったんだよね」  あ、喧嘩は本当だったんだ。  なんだか笑えなくて、あたしは黙ったまま次の言葉を待った。 「まぁ、だから、喧嘩は本当のことだから否定はしないけど、先生との関係ってのは、嘘だよ」 「……え」  張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ気がして、あたしはイブちゃんを見る。 「俺が自ら仕組んだの。学校内で一番若い先生見つけて声かけて、俺が先生のこと狙ってるって噂、流させてって」  驚いているあたしを見て、イブちゃんは柔らかく微笑んだ。
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