→あの日のイブちゃんのこと

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「お、おかえり優乃ー。遅かったな。伊吹になんもされてないか?」 「え? なんもってなに? お兄ちゃんこそっ……」  見ていないけれど、あたしはさっきお兄ちゃんが雫とキスしていたことを知っている。だけど、思わずそこまで言いかけて一気に恥ずかしくなってしまった。 「は? あ……!? まさか」  あたしの反応に、お兄ちゃんはすぐさま焦りだす。 「……見たのか?」 「見てないっ! イブちゃんが見えない様にしてくれた!」 「あー……まじか、良かった」  安心した様に大きなため息をついて、お兄ちゃんはソファーに座り込んだ。 「良かったじゃないよ! やめてよ、近所で堂々とそーいうことしないでよ」 「なっ! だ、だって雫が可愛すぎるのがいけないんだよ! 俺は悪くないし」 「え!? 雫のせいなの!?」 「あ、いや、雫のせいではあるけど、そうじゃなくて」  慌てて真っ赤になるお兄ちゃんに、あたしはやっぱりスンッとしてしまう。一気に気持ちが冷めてしまって、起き上がってお兄ちゃんから一番遠い場所に座り直した。 「離れすぎだろ」  やっぱり、最近のお兄ちゃんの行動はキモい。  だけど、きっと雫がお兄ちゃんのことが大好きって気持ちは、きっと雫が思っているよりも伝わっている気がする。だから、きっと心配することなんて何にもないと思った。  
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