26人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
「お、おかえり優乃ー。遅かったな。伊吹になんもされてないか?」
「え? なんもってなに? お兄ちゃんこそっ……」
見ていないけれど、あたしはさっきお兄ちゃんが雫とキスしていたことを知っている。だけど、思わずそこまで言いかけて一気に恥ずかしくなってしまった。
「は? あ……!? まさか」
あたしの反応に、お兄ちゃんはすぐさま焦りだす。
「……見たのか?」
「見てないっ! イブちゃんが見えない様にしてくれた!」
「あー……まじか、良かった」
安心した様に大きなため息をついて、お兄ちゃんはソファーに座り込んだ。
「良かったじゃないよ! やめてよ、近所で堂々とそーいうことしないでよ」
「なっ! だ、だって雫が可愛すぎるのがいけないんだよ! 俺は悪くないし」
「え!? 雫のせいなの!?」
「あ、いや、雫のせいではあるけど、そうじゃなくて」
慌てて真っ赤になるお兄ちゃんに、あたしはやっぱりスンッとしてしまう。一気に気持ちが冷めてしまって、起き上がってお兄ちゃんから一番遠い場所に座り直した。
「離れすぎだろ」
やっぱり、最近のお兄ちゃんの行動はキモい。
だけど、きっと雫がお兄ちゃんのことが大好きって気持ちは、きっと雫が思っているよりも伝わっている気がする。だから、きっと心配することなんて何にもないと思った。
最初のコメントを投稿しよう!