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「いーんだよ。俺が優乃と少しでも一緒にいたいから送っていくの。それとも、優乃は俺に送られるの嫌?」
怒ってないけど、少し不満そうに聞いてくるから、あたしは首を振る。
「嫌じゃ、ない」
「じゃあいいでしょ。優乃は? 俺が隣にいるの少しは慣れた?」
「……うん」
イブちゃんにそばにいてほしいって、昨日からずっと思ってる。なにしてても、イブちゃんのことが頭から離れなくて、ようやく眠れたと思って目覚めた朝は、イブちゃんが向かえに来てくれる嬉しさで目が覚めたし、こうして並んで学校に行けることが、なによりも嬉しいって感じてる。
これって、やっぱり雫の言う通り──?
「また放課後迎えに来るからな」
「うん、またね」
校門の前まで来ると、イブちゃんは手を振り元来た道を引き返していく。やっぱり、遠回りさせてしまっている。なんて、罪悪感みたいなものを感じながらも、一緒に歩いた道のりが楽しすぎてドキドキがおさまらない胸に自分でも驚く。
余韻に浸っていたあたしは、周りの目がこちらに集中していたことに気がついて、ハッとした。
「え、あの人佐久間伊吹の彼女?」
「ヤバい……早朝から悪魔に送ってもらうとかどうやったら出来るの?」
「こわ……」
小声だけどはっきり聞こえてくる声の数々。
あ、あれ?あたし、もしかして怖がられてる?
急いで教室に入ると、先に来ていた雫を見つけて声をかけた。
「あー、雫おはようっ。どうしよう、あたしみんなに恐れられる存在になってるかも……」
「まぁ、伊吹先輩と一緒にいればそりゃそうよね。でも別にそんなのいーじゃん無視しとけば」
簡単に笑ってしまう雫に、あたしもそーだよねと苦笑い。
「それより、今日只野の存在なくない?」
「……あ、たしかに」
いつもは必ず校門前で待ち伏せしているのに、今日はそれがなかった。もしかしていたけど気が付かなかった? いや、雫も存在がないって言っているから、本当にいないんだと思う。風邪かな?
「静かでいいねぇ」
「ほんとだ」
放課後まで穏やかな時間を過ごして思う。平和って素晴らしい。
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