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只野が指定してきた場所は学校の生徒指導室。
職員室のすぐ隣だし、何かあってもすぐに助けを呼べる。人気のない場所に呼び出すのかと思ったけど、少し安心する。
さっさと訳のわからない嫌がらせを終わらせて、イブちゃんが迎えにくるまでにあたし一人で解決してみせる。
只野なんて気持ち悪いだけで、怖くないし。
お兄ちゃんのいない中学最後の一年間を只野なんかのせいでつまらなくしては勿体無い。
放課後だけど、やはり職員室付近では何人かの生徒や先生とすれ違った。あたしは安心して生徒指導室の扉に手をかけた。
「あれ? 優乃ー、まだ帰ってなかったんだね」
開けようとした扉からパッと手を離して振り向くと、雫が立っていた。
「あ、し、雫? なんで?」
「さっき言ったじゃん。担任に呼ばれてるから先帰っててって」
「あ、そう、だっけ」
「優乃も?」
チラリと進路指導室の表札を見て、雫は首を傾げるから、あたしは頷いた。
「そーなの。だから、雫も先、帰ってていいよ」
「そっかー、あたし終わったから一緒に帰れるかなぁって思ったけど、残念っ。頑張ってね」
「……うん、ありがと!」
「じゃあ、また明日ね」
笑顔で手を振る。心が痛い。雫に嘘をついてしまった。あたしが呼び出されたのは先生じゃなくて、只野だ。でも、きっとそれを言ったら行っちゃダメだと止められる。
あたしだって本当はいきたくない。
はぁ、とため息を吐き出してから、あたしは進路指導室の扉を開けて中に入った。
カーテンが引かれて、日差しが遮られた室内は灯りがついていなくて陰っている。
すぐに、只野が一人で椅子に座って待っているのを見つけて、あたしはゆっくりその前に立った。
「小宮、来てくれてありがとう」
微笑まれても、気持ちが悪いだけだ。
それ以上は近づかずに、あたしは只野の机の上に視線を落とした。
写真が数枚並んでいる。
「……これ、なに?」
「小宮ってさ、佐久間伊吹が好きなの?」
「……え?」
先に聞いたあたしの問いには答えずに、只野がギラリとした瞳でこちらを見て聞いてくる。
「こいつ、マジで最悪だよ? 中学の時に美人な先生と関係持ってたらしいし、喧嘩もヤバい。ここに証拠があるから」
机の上をトントンっと指で叩いて、あたしに写真を近づけてくる。
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