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「まぁ、確かに……」
カタンっと只野が椅子に座り直して、机の上の写真を集めながらため息をついた。
「俺さ、幼稚園の時に小宮のこと見て、一目惚れ? って言うのかな。したんだよ」
「……え?」
「いや、その顔。めちゃくちゃ嫌そうな顔すんなよ」
自分でも引き攣ったのが分かったけど、只野にすぐ突っ込まれて苦笑いする。だって一目惚れした相手にカエル顔面攻撃してくる?
「小宮優しいから、いっつもみんなに囲まれててさ、話したくても近付けないし、どうにか振り向いて欲しくて、今まで色々してきたのに、全然効果なし」
いや、嫌いになる効果抜群だったよ。良かれと思ってやってたの? 怖すぎる。
「最終手段に出ちゃったけど、正直俺も佐久間伊吹を敵になんてしたくないし、動画だって上げる気は元々ないよ。どうにか小宮と話すきっかけが欲しかっただけ」
「……もしかして、今日休んだのって……」
「え? あぁ、この写真用意してた。昨日動画手に入れてすっかり写真用意すんの忘れてさ、まぁ、なきゃないでも良かったけど」
「ほんと、バカだね」
「は?」
思わず溢れてしまった本音。
あたしは呆れてため息を吐きつつ、笑うしかない。
「もう、只野がバカすぎて怒る気にもなんないー!」
「なんだよ、それ」
「もうあたしばっか構うのやめなよ。仮に嘘で付き合ったとしてもさ、どうせあたしがこの先只野のこと好きになることは、絶対にないから」
「……きっつ! はっきり言うよなー」
明らかに傷ついたようにガタッと椅子から立ち上がってふらつく只野。
「無視しても分かんないからちゃんと言うの。あたしは只野は嫌い。意地悪してくるようなやつ好きになんてなれるわけないじゃん!」
「……意地悪?」
でかい図体をしながら、只野が首を傾げるからそのキョトンとした姿にまたしてもイラッとする。
「幼稚園から今までずーっと、あたし只野の嫌がらせがほんっとうに苦痛だったの! あたしのブラックリストナンバーワンなんだからね! だから、これからも嫌われることはあっても好かれることはないと思ってて!」
心に溜まっていた蟠りが全て吐き出たみたいに、なんだかスッキリした。
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