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「……まじか。そんな風に思われてたんだ、俺」
急にシュンっとして小さくなる只野に、あたしは畳み掛ける。
「あー、スッキリした! 今までお兄ちゃん頼ってばっかりだったからずっと只野のことも無視し続けてたけど、やっぱり想いって伝えないと伝わらないんだね!」
「え? だったら俺の想いも……」
「あたし、只野なんか大っ嫌い! 顔も見たくない! 今まで散々嫌なことして来たのに自覚なしとか本当バカ! だから、ごめんなさいっ! あたしはあなたとは絶対に付き合えません」
深くお辞儀をして、精一杯に謝る。
さっき、真剣な目で伝えてくれた言葉はあたしの心には刺さらなかったけど、しっかり伝わった。
だから、あたしの真剣な想いも、伝わって欲しい。これで、只野がちゃんと諦めてくれたら、あたしには気持ちは届かないって分かってくれたら、明日からのあたしの日常が変わる気がする。
「……俺は小宮のこと好「ごめんなさいっ!!」」
食い下がる只野の言葉に被せて、もう一度謝る。
「あー、もう! わーかったよ! これ以上嫌われるのもなんか嫌だし、望みもないならもう諦める」
大きなため息を吐きながら、只野はカーテンを勢いよく開けた。窓から日差しが入り込んできて、室内が明るく照らされた。
「ありがとう!」
分かってくれたことが嬉しくて、あたしは笑顔になって只野にお礼を言った。
「そー言うとこがかわいいんだよ、小宮は! 諦めきれなくなるから、早く行けよ、校門付近が不穏な空気漂ってるぞ」
怒りながらも只野が窓の外を指差すから、あたしはイブちゃんが迎えに来ていることを思い出した。すぐに生徒指導室から出ようとして、机にまとめられた写真を手に取る。
「これももらっておくね! じゃあ、バイバイっ」
只野に手を振って挨拶をする。こんなこと、今までしたことなかったけど、なんとなく、明日からは大丈夫な気がしたから。
あたしはイブちゃんの待っている校門に急いだ。
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