学園乙女ゲームのヒロインに転生したので、愛する彼と真のエンディングを目指します!?

1/13
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 抜けるように青い空。うららかな日差し。厳かな純銀のベルが鳴り響き、誰かの声がする。 「君の隣で、春を待つ」 そう、それは何十回と聴いた、このゲームのメインヒーロー九条隼人(くじょう はやと)のタイトルコール…。 「もー!!!いいかげんにしろおおおお!」 と学校の裏庭で叫んだのはこのゲームのヒロイン、早乙女優子(さおとめ ゆうこ)だ。  いや、優子の本名は佐藤優子という。優子は前世では、どこにでもいるオタクな女子高生だった。優子は「君の隣で、春を待つ」通称「君春」という乙女ゲームの熱狂的ファンだった。  「君春」とは学園乙女ゲームである。作りこまれた細かな台詞の数々はまるでキャラが現実に存在しているようだ、と高い評判を得て、熱いファンを獲得している。  システムは、勉強やおしゃれといったパラメーターを平日に上げておくと、その度合いに応じて親密度が上がるイベントが発生し、プレゼントや会話の選択ができるというものだ。そして、一定のパラメーターと親密度があればエンディングを見ることができる。  中でもメインヒーローの九条隼人に心をわしづかみにされた優子は、ゲームを何周もして、エンディングをコンプリートする。それだけではなく、アクリルスタンド、缶バッチ、ブロマイドと言ったグッズを買い漁り、毎日「君春」の二次創作小説を読んだり、書いたりしてにやにやする日々を過ごしていた。  それが、突然の交通事故により、命を落とした優子は、「君春」のヒロインとして転生する。  最初の内は、愛してやまない九条隼人と結ばれることに鼻血が出るほど喜んだ優子だったが、ある問題が発覚する。  それは、3年目の卒業式を迎え、結ばれたヒーローとエンディングのキスをすると最初の1年目に強制的に戻されてしまうということだ。  幸いにも優子は「君春」の熱狂的ファンだったため、どの選択肢が親密度が上がるのか、どのパラメーターを上げておけば有利か、といったことは頭に叩き込まれていた。だが、誰のどのルートを攻略してみても結果は同じで、1年目に強制送還させられてしまう。  優子は昨日学校の裏庭で先生とキスをしたのにもかかわらず、今朝、再び「君春」のタイトルコールを聴いた。つまり、また1年目に戻ってしまったということだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!