ゴミから始まる妄想ストーリー 【お惣菜パック】

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【お惣菜パック】 まさか自分が、お魚くわえたドラ猫を追いかけることになろうとは夢にも思わなかった。 裸足じゃないことだけがせめてもの救いだろう。 お花見キャンプと銘打って、コウちゃんとやってきたキャンプ場で、満開の桜の下を私は走っている。 お惣菜パックを加えた猫を追いかけて。 お惣菜パックの中身は、はみ出んばかりの大きさのアジフライ(実際にはちょっとパックからはみ出している)。 実際追いかけてみると分かるが、猫はビックリするくらい早い。 あの国民的アニメの主人公はドラ猫に追いつけたのだろうか? そんなことを考えている間にも猫と私との差はどんどん開いていき、遂には猫は茂みの中に消えていってしまった。 今から食べる予定だったのに…。 走り疲れた体を引きずり、しょんぼりとサイトに戻る。 水を汲みにいっていたコウちゃんが戻ってきていた。 「ハナちゃん、どこ行ってたの?なんかすごい疲れてない?」 「猫にアジフライ取られちゃった…。」 「え、ホントに?そんなことってあるの?」 「ホントだよ〜。私たちのお昼のメイン、無くなっちゃったよ〜。」 設営を終え、ひと段落ついてこれから昼食というタイミングだったのに、私がちょっと目を離したばっかりに…。 「そっかー、アジフライ無くなっちゃったかー…。」 しばしの沈黙。 頭上では桜の花びらがチラチラと舞っている。 コウちゃんが口を開く。 「まあ、しょうがないね。そしたらとりあえず夕飯のつもりだった肉でも焼いて食べようよ。せっかくお花見キャンプなんだし、楽しくいこう。」 コウちゃんは続ける。 「でも、その猫ちゃんもきっとお腹空いてたんだろうね。ここを餌場にされてもキャンプ場は迷惑なんだろうけど、とりあえずは猫ちゃんが自然界で生き抜く手助けができたってことでどう?」 コウちゃんに言われ、なんとなく納得。 人助けならぬ、猫助けをしたということにしておこう。 その方が私たちもいい気分。 こういう時、一緒にいるのがコウちゃんで良かったなってホントにそう思う。 だって、お昼ご飯だよ。 食べ物の恨みは恐ろしいんだよ。 コウちゃんはアジフライが大好きなんだよ。 相手が相手だったら「なんでちゃんと見てないんだよ!」って怒られてもおかしくない。 考え方一つで物事の見方はガラッと変わる。 コウちゃんを見てると、何かトラブルが起こった時に『最悪』って思うか、『まあそんなこともあるよね』って思うか、そういうことで人生の幸福度って変わるんじゃないかなぁって思う。 着眼点の違いっていうのかな? 起こった出来事は変えられなくても、そこにどういう意味づけをするかはそれぞれが決めることができる。 『アジフライはなくなってしまった。お昼ご飯のメイン無くなっちゃって最悪じゃん。』 ではなく、 『アジフライはなくなってしまった。でも猫助けはできたし、まだ食べるものもあるし、桜はきれいだし、まあいいんじゃない?楽しんでいこう!』 の方がいいに決まってる。 そんなことを考えていたら、コウちゃんへの思いをどうしても口に出さずにはいられなくなってしまった。 こういう時はどうすればいいか、私はよく知っている。 心のままに素直に言うのだ。 「コウちゃん、ありがとう。大好きだよ。」 晴天のお花見キャンプ、まだまだ時間はたっぷりある。 最高の一日になりそうだ。
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