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お花見と言えば(3)
夜桜でのお花見は学生時代に凝りていた妙子は、社会人になってすぐに上野公園で昼間のお花見を始めてした。
妙子は、大勢でのお花見は前回、の夜桜のお花見で経験はしたが、シートに座って、大勢で、ワイワイと。
あの昔のつつじ祭りの時のようなお花見をしてみたかった。
だが、妙子も、その頃付き合っていた彼も友達が少なく、結局二人だけで上野公園に小さなシートを敷いてのお花見になった。
昼間は気温が上がる。
その頃付き合っていた彼は、汗をかくのがとても嫌いだった。
元々体育会系なので、スポーツで汗をかくのは気にならないらしいのだが、ユニフォーム以外では汗をかきたくない様で、昼間のお花見では、
「暑いなぁ。」
を、繰り返し、お弁当を食べ終わると、すぐに撤収となった。
お酒好きだった妙子は、今度こそ、のんびりと何時間もそこでゆっくり、桜を愛でながらお酒を呑んで、美味しいものを食べて。と想像していたのだが、またしても思うようにはならなかった。
それから何十回も春が通り過ぎて、50を過ぎて再婚して、夫なった人とお花見に行くことになった。
緑の多い団地群に住む二人。桜の多い場所を探し、宝野公園という場所がお花見で有名だと調べた。
とても広い芝生がある。団地の一角にある公園なのであまり騒げないのかな。と考えながら向かったのだが、広くてそんな心配は不要だった。
街灯は住民の為の物で、夜はライトアップもないので昼間のお花見のみ。
近くの駅から少し歩くが、近隣の駅でお酒やおかずを買って、大きめのシートを持って、公園へ。
シートを大きく広げた上には桜の花が広がっている。
大きな芝生の公園の両側に桜の花が数えきれないほど植えてあり、皆、桜の近くに場所を取るので、子供連れの人は真ん中のあいた芝生で持って来た三輪車などで子供を遊ばせる。
大勢でのお花見にはどうにも縁がない妙子ではあったが、ようやくゆっくりとお酒やおつまみを楽しみながら桜を見上げ、少し酔ったら、広いシートに寝転がり、少しだけウトウト。
思っていたお花見を楽しむことがようやくできたのだ。
長い年月かかったが、思っていればいつかはかなうものなのだなと、春の風に吹かれながら桜の花びらがひらひらと舞い落ちるのを明るい気持ちで見送るのだった。
【了】
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