君が笑うから。

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「フィリア=アルト侯爵令嬢。君との婚約を解消する!そして、ナタリー=チェスト嬢と正式に婚約することとなった。」 王太子・ライネル=マクワイヤの声が会場に響いた。 「理由は、フィリア嬢が、女神の恩寵(おんちょう)を受けたナタリー嬢に執拗な嫌がらせを繰り返した挙句、亡き者にしようとしたという証言が数多く寄せられたからである。」 ナタリーに同情する声。 フィリアを非難する声。 そんなはずはない、と擁護する声。 会場中がざわつく。 「しかし!寄せられた証言は全て証拠も何もない虚偽だと判明。そもそも、フィリア嬢とナタリー嬢は親友として絆を深めており、私とナタリー嬢の仲を取り持ってくれたのだ。 この婚約破棄について、アルト侯爵からも了承を得ており、国王陛下もそれを承認している。」 ライネルとナタリーは目を合わせ、フィリアに微笑みかける。 フィリアも穏やかな表情でうなずいた。 「そして、フィリア嬢。君が希望していた隣国への留学を許可しよう。」 「ありがとうございます!」 会場内の空気は祝福ムードで明るく変わっていった。 一人を除いては。 「ガルムンド王国第二王子・ヨシュア=ガルムンド殿。」 「はい。」 「フィリア嬢をよろしく頼む。君になら安心して任せれるよ。」 「任されてください。ライネル様。」 卒業パーティーから数日後。 フィリアは留学。 ヨシュアは帰国。 二人は多くの人に見送られ、出立する。 「フィリア嬢。本当にいいのか?」 「ええ、いいのよ。元婚約者が近くにいては、二人の祝福ムードに水を差してしまうわ。」 フィリアは心から喜んでいるのだと伝わってくる。 「そうだね・・・。」 フィリアは外の景色を見るのに夢中で気付かなかった。 ヨシュアの表情が曇っていることに。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!