畜生道堕ち

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今から10年前――。 小学5年生の時、私には翔太という友人がいた。 イケメンで勉強が出来る上、場を盛り上げるのがとても上手だった翔太。 クラスメイトや担任教師等沢山の人に好かれていた彼には、勿論、友人も沢山いた。 ある日、そんな彼と私を含む学年全員が群馬県は伊香保へ校外学習に向かう事となる。 クラスメイト達は皆、こぞって翔太と班を組みたがり、最終的にはくじ引きによって各々の班は決定された。 偶然にも、翔太と同じ班になった私。 私達の班は、翔太のリードで楽しく校外学習の準備や、班での役割決めを進める事が出来た。 ちなみに、私の班での役割はカメラマンだ。 そうして、校外学習当日。 私達は旅の思い出に、伊香保の様々な場所で記念写真を撮りまくった。 その後、写真を現像に出す私。 数日後、完成した写真を受け取り、私は言葉を失った。 何故なら、翔太が写った写真――そのどれもに、犬や猫等の動物が写っているのだ。 しかも、ただの動物達ではない。 口や鼻から血を垂れ流し、手や足――ときには目や耳が片方欠損した……明らかに、何らかの虐待を受けた様子の黒い動物達なのだ。 そんな彼らが、白目の一切ない――漆黒に濁りきった眼球で、じっと翔太を見上げているのである。 彼の足元に佇みながら。 勿論、撮影した時にはこんな動物達はいなかった。 ――それらの写真に何か非常に嫌なものを感じた私は、ある日の放課後、思い切ってその写真を翔太に見せてみる。 と、 「ああ、そうだよ。俺、犬や猫を殺すのが趣味なんだよね!ストレス発散ていうの?でもさ、俺が()ってるのって野良犬や野良猫だけだし。社会に迷惑をかけてる害獣を退治してやってるんだから、俺、ヒーローじゃね?」 あっけらかんと笑いながら――いや、寧ろ何処か自慢気に、そう語る翔太。 私は、そんな彼の話した内容に、すっかりと言葉を失ってしまった。 以降、私は少しずつ彼と距離を置くようにする。 しかし、同じクラスである以上、嫌でも関わらなければいけない時というのはあるもので――。 遠足で同じ班になってしまった際、彼と一緒に記念写真を撮らなければいけなくなってしまった私。 数日後、現像されたその写真――そこに写る彼の足元には、以前見た時より格段に増えた黒い動物達が、血の涙を流しながらじっと彼を見上げていた。 まるで、彼を取り囲む様にしながら。 その写真を見た瞬間――、 (ああ……この人は、きっと、……) 彼は、『越えてはいけない人としての境界』というものを、きっと越えてしまった。 もう、私達とは違う世界の人間なのだ。 心の底から、本能の様なものでそう理解する私。 私はその日以降、徹底的に翔太とは距離を置く様になった。 そうして、何年もの時が過ぎ――。 あの日から10年経った先日、小学校の友人達が集まったお花見の席で、久し振りに私と彼は再会する。 その際、皆で記念写真を撮ったのだが――。 彼は全身黒い動物達に覆い尽くされてしまい、最早顔すら分からない状態になっていた。 それから5日後、私は友人から、翔太が亡くなった事を知らされる。 翔太はペット等飼っておらず、おまけに、彼が暮らしていた部屋はマンションの高層階だったらしいが――鍵のかかった自室で発見された彼の遺体は、野犬に食い荒らされたかの様に酷い有様だったらしい。
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