たった二人の家族だった

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たった二人の家族だった

『大人気アイドルのお相手は若きIT社長?!』 ふとコンビニで手にした、今日発売の週刊誌。 パラパラページを捲ると、目的としていた記事よりも、よっぽど気になる記事が目に入る。 『大人気アイドルつぶき花澄、イケメン社長と銀座デートの夜』 そうデカデカと書かれてある見出しの次に目に入ったのは、男女二人のツーショット。 女性は最近人気急上昇中のアイドルらしい。 男性にはモザイクがかかってあるが──見覚えのある『仕方なく買ったハイブランド』のジャケットに、肌身離さず付けているブレスレットはまさしく"あの日"の姿だった。 『よく聞け、今日は取引先の社長から高級焼き肉の奢りだ!』 勝ち誇ったようにドヤ顔を浮かべるあの姿を思い出してはいらっとしてしまうが……まぁこういうことだったんだろうなと。 (はぁ……) ため息で少し胸の奥が軋むことを隠して、そそくさとコンビニを後にした。 そして一時間に二本しかない電車に乗って、家路につく。 ここは東京までニ、三時間程度の、乗り換え二回で行ける地方都市。駅前にはビジネスホテルや二十四時間営業のコンビニはある規模だからそんなに田畑だらけでもない。そんな場所で私は産まれ育った。 帰る時間だとこの辺はコンビニしか開いてないけれど、そもそも一人暮らし──いや、週末だけは二人になるけど の私は、そこまで買い物が必要というわけではないので問題はない。珍しく車も持っていないけれど、基本的には自転車でコトが足りる。
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