変わり行く家族

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それは私が知っている弟と、全く違う姿だ。 「おぉ、やっぱ綺麗だ」 私がネクタイを結び終わると、彼はふふっと笑って「ありがとう」と言った。手を伸ばすと、くしゅりと私の髪を撫でて──頭を包み組むぐらい大きな手に、心臓の音が高鳴り顔を直視できない。 ──いつから、と言われたらわからない。 知ってる侑軌が変わっていく。私はそれを受け入れることができない。 "弟"という器からはみ出た気持ちの行き場がなくて、苦しいのだ。 「じゃあ行くよ」 侑軌は玄関から大声で私を呼ぶ。 玄関で見送る時は、必ず頬にキスをするのが私達の決まりだから。 元々はママが始めたこと。大昔、それこそ父との再婚当時に「愛が足りない!」とママが(文字通り)ぷんすか腹を立てたことにより始まった。 元々感情を表に出さない父だったので、この行ってらっしゃいのキスが唯一と言っていい程の愛情表現だった。 そして次第にママは私達にもやりはじめて……侑軌も私もやり始めた。 さすがに途中から止めようとしたが、侑軌が続けているので仕方なく続いている。 侑軌が屈んで頬を近付けるので、私はちょんと唇を付ける。 侑軌は私の頬に手を当てて、ちゅっと音を立てて唇を優しく押し当てた。 唇が離れると、彼は笑顔で手を振って、玄関を出ていく。
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