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しばらくすると車のエンジン音が聞こえ、やがて彼方に消えて行った。
(やっぱりダメだ……)
気付けば頬に涙がつたっている。
"弟"であることを除いて。
私のことを一番に思ってくれて、物凄く大切にしてくれる。おまけに高身長に逞しい身体に整った顔立ち。若くして社長になれるほどの実力の持ち主。
普通に考えれば、好きにならない理由はない。
その気持ちは徐々に、"弟"の器からはみ出た気持ちを侵食していく。
だから最近、彼といることが辛い。
でも唯一の家族を失いたくなかった。だから気持ちに蓋をしながら、彼との時間を過ごしていた。
だけどあんなことがあった以上、このままでいいとは思えない。
少なからず……あの女の人は、侑軌に好意を抱いているのだろう。だけど侑軌がその方向に気持ちが向かないのは、私が居るからだとしたら。『私が一人になること』が引っ掛かっているのなら、もう解放してあげるべきではないのだろうか。
それに……彼の方から離れていく前に。
ちゃんと自分からケジメをつけなければ、きっと私は立ち直れない。
どうせ上部だけの家族だ。
そろそろ終わりにする時、なんだろう。
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