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変わり行く家族
それは昔昔の話。
私の父は機織りの仕事をしていた。ここら一帯は有名な織物『勢多織』の産地で、父はその職人として織物を、特に帯を作る工房を母と共に経営していた。
ところが私がまだ小学生になる前に、母が亡くなった。元々精神的に弱い人だったのだけれど、突発的に自殺してしまった。実は私も道連れにしようとしたのだが、どういうわけか私は助かってしまったのだ。
父は私を憐れに思ったのだろう。
今まで育児に干渉しなかったけれど、誰の助けも借りずにきちんと私を育ててくれた。
そして二人での生活が安定してきたある日のこと。県内のデパートで勢多織の展示即売会が行われ、その時に熱心に父に話しかけにきた女性がいた。
「あなたが作る帯が素敵だったので、どうしても会いたくて来たんです」
その人はモデルをしているすごくキレイな人で……売れないからホステスの掛け持ちもしていたらしいが、モデルの撮影で着た父の着物の帯に一目惚れして、わざわざ父を訪ねてきたらしい。
その人物こそ──後に私が『ママ』と呼ぶことになる人物だ。
その後シングルマザーだった彼女は、隣の少し大きな市に移り住んだ。ちょうど父と付き合いのある呉服屋さんの人手が足りず、彼女はそこで働くことになったのだ。
そしてしばらく彼女と交流を重ねた父は、彼女と再婚した。私が小三の頃で、ちょうど小一になる息子も連れての子連れ再婚だった。
そしてその連れ子こそ、弟の侑軌だ。
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