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「しおねぇ、これあげる」
侑軌が中三に上がった頃、私に一つの通帳が渡された。
それは念のために作った侑軌の口座で……数字を見て、私は目を丸くさせた。
「せん、まん……何この金額!?」
通帳に並んだ数字は、私のバイト代の十倍以上の金額。なぜかずっと数千円と記されていた通帳に、先週の日付で一気に大金が振り込まれていた。
「これは俺が稼いだ金」
「稼いだ!?」
「そう、アプリ開発したの。その広告費が入ってきたから、しおねぇにあげる」
怪しむ私の視線を感じてか、侑軌は「大丈夫、ちゃんと正規の手続き踏んでるから」と言って得意気に笑った。
「見る?俺が開発したアプリ。目覚まし時計なんだけど、簡単に消されないようにちょっとした仕掛けも作ったんだ」
侑軌はまだ私が使いこなせていないスマホを出して、画面を見せてくれたが、正直私にはちんぷんかんぷん。
首を傾げる私に説明は無駄だと思ったらしい。
「ともかく!あと三つぐらいアプリ開発してるんだ。稼ぎは全部この中に入れるから、しおねぇが持ってて」
確かに侑軌は、毎日パソコンに向かって何かをしていた。部屋には昔からプログラミングの本が沢山あり、『たまには外で遊んでこい』と言うほどパソコンにのめり込んでいるのを見てきた。
だけどまさか……パソコンを使ってこんな早くからお金を稼ぐことを考えていたとは思ってもみなかった。
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