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この家にも帰ってくる必要もないし、もう私の役目は終わった。
そう思っていたけれど、なぜか侑軌は毎週帰ってくる。
金曜日の夜に帰ってきて、月曜日の朝に家を出る。それがずっと多忙な今でも続いている。
侑軌は在学中にゲームアプリ開発中心の会社を立ち上げて軌道に乗せた。今じゃ一流のオフィス街に会社を構えている。
ここからだと東京は遠いし、そんなに毎週帰ってこなくてもいい。いやむしろ……もう帰ってこなくていい。
そう言ったけれど、侑軌はそれを拒否した。
「しおねぇ、俺ら唯一の家族だろ?!」
侑軌が私に怒鳴ったのは、この時が初めてだった。
「俺はここしかほっとできる場所が無いんだ。しおねぇと居る時しか気が抜けない。やっぱり家族がいいんだよ」
そう言って目を細めて笑う姿は昔から変わらない笑顔で、私の心はチクンと痛んだ。
彼は家族と言うけれど……親が亡くなった今、私達は戸籍で繋がってるわけではない。
上部だけの家族だから、家族らしくあるように振る舞ってくれているのだと思う。
私が一人ぼっちにならないように。
──きっと私が侑軌の足枷だ。
侑軌が弟になると言われた時、彼を抱き締めてこう言ったのだ。
『もう一人じゃないんだ!』と。
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