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きっと彼はその言葉を守るように、ずっと私が一人にならないように、『家族』というものを守ってくれているのだろう。
──だから私は、間違えるわけにはいかない。
日曜日の朝、私が起きた時には侑軌は身だしなみを整えている最中だった。
髪をびしっと整えて、きちんと皺のないスラックス姿で、Yシャツのボタンを止めていた。シャツの隙間から見えるしなやかな筋肉は、昔ではあり得ないぐらい立派で逞しい。
「しおねぇ、何かうまく行かないんだけど」
「何?貸してみ」
ネクタイに苦戦している侑軌に代わって、私は彼のネクタイを締める。
中学生の頃も制服はネクタイだったので、下手な侑軌のネクタイをいつも直していた。
あの頃とやっていることは変わらない。
だけど気持ちは──随分と違う。
家を出る前までは、彼は女の子のように細い子だった。スポーツもあまりせずに、物静で、学校でも『何か残念な人』と言われているような子だった。
──だけど大学に進学してから、彼は変わっていった。
『運動するようになった』と言ってた通り、日に日に身体の厚みが増していき、がっちりとした筋肉質な身体に変化していった。
身長もその影響か、もう伸びないと思っていたが、更に伸び続けて百八十センチを越えた。高身長で胸板も厚い"男らしい"身体になってしまった。
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