(二)

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 鈴乃が二十歳になって一週間が経過した。鈴乃は、誕生日を迎えてから、先輩たちと対面で会話をすることが出来なくなっていた。メールや電話では、やり取りをすることができるのに、姿を認識してもらえないことに鈴乃は、ますます疑問を抱くようになっていた。そんな鈴乃を支えたの入社したばかりの新人茉莉であった。茉莉は、鈴乃の姿を当たり前のように認識することができていた。誰も挨拶を返してもらえなくなったのに返事をしてくれることが何よりもうれしいことであった。しかし、やはり雇用主としては、姿を見せない鈴乃に対して不信感を抱かざる得なかった。  そして、多くの従業員からも鈴乃の姿をみていないと報告を受けた支配人は、鈴乃に対して強い不信感を持った。そして鈴乃にメールで問い詰めた。すると、鈴乃は、以前と同じように働いていると反論をした。それを信じることができない支配人は、鈴乃がメールで話しているように仕事をしているのか確かめるために監視カメラの映像を確認した。すると他の従業員の供述では、いなかったはずの鈴乃の姿が写っていた。支配人は、それが何かの間違えでないかと何度確認しても写っていた。けれど、支配人は、鈴乃の姿が写っていることばかりに気をとられて鈴乃が薄っすらと透けていることには気がつかなかった。  映像から鈴乃の供述が正しいことを知った支配人は、鈴乃を解雇することはできなかった。
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