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それから二週間ほど経つと、ある噂がささやかれるようになっていた。
その噂の影響で鈴乃の職場は、さけられるようになっていた。もちろんその噂の原因となっているのは、鈴乃である。そして噂を流したのは、鈴乃の姿を認識できなくなった先輩たちだった。
それは、鈴乃が二十歳になって一週間経った日に、休憩室で起きたことが原因だった。
「ねえ、鈴乃さんって二十歳の誕生日に亡くなったらしいよ。」
「それでもまだこの世をさまよってるらしいよ。」
「死んでるって自覚がないらしいよね。」
「幽霊が近くにいると思うと怖いよね。」
「そうだよね。」
「いい子だったし、かわいそうだけどさ。一緒に働くのなんて怖いよね。」
「わかる。」
「ねえ、茉莉ちゃんもそう思うよね。」
「いえ、そんなことは思いません。別に幽霊だとしても私たちに害はないので、怖くないです。それより、一緒に働く人の悪口言うような人と働くことの方が何倍も怖いです。」
と茉莉は堂々とした口調で言った。
先輩たちは、黙ってしまった。何も言えなくなってしまった。茉莉の言った言葉は、彼女たちの心に深く突き刺さった。そして、それに追い打ちをかけるように茉莉は、言葉を重ねた。
「ここで黙ってしまうってことは、先輩たちは私が同意するって思い込んでいたんですね。そして私に言わせる気だったんですよね。自分の立場を失いたくないから。ずるいです。」
「ごめんね。そういうつもりはなかったの。」
「私じゃなくて、鈴乃さんに謝ってください。」
「え、ここに居るの。」
「もちろんです。ね、先輩。」
『ありがとう。茉莉ちゃん。』
と鈴乃は、茉莉ちゃんにしか聞こえないからこそ感謝を伝えた。
「どういたしまして。」
と茉莉は鈴乃方を見て言った。
「どこ見て言ってるのよ。」
「嘘でしょ。ほんとにそこにいるの。」
「私たち呪われるんじゃないのかな。」
「やだ。怖い。」
と言いながら先輩たちは鈴乃を怖がって走って休憩室を出て行った。
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