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それから、しばらく経った日のことだった。それはちょうど一週間後に夕乃の誕生日を控えた土曜の夜のことだった。いつものと同じように夕乃が鈴乃のスマートフォンに電話をかけた。
「もしもし、れい。元気にしてる。」
「元気だよ。ゆうは。」
と鈴乃いつもより弱々しい声で言った。
「元気だけど、何かあったの。」
「特に何もないけど。」
と鈴乃は、いつもと変わらない口ぶりで言った。
「そっか、ならいいんだけど。あのね、来週ある私の誕生日会来てくれる。」
「もちろん行くよ。」
「来てくれるの嬉しい。れいの誕生日の時いけなくてごめん。」
「いいよ。なんかその日仕事が終わらなくていけなかったの。だから、なくなちゃったんだよね。」
と鈴乃は、嘘をついた。
「そうなんだ。大変だったね。」
「そんなことはないよ。」
「私は、所詮アルバイトだけどさ。働くって本当に大変だから働いてるもう就職して働いているれいは、ほんとにすごいよ。」
「まあ、でも卒業したらさ。働くんだし、社会のために勉強してるゆうはすごいよ。」
「れいが思っているほど大学生って偉くないんだよ。昔よりも入りやすくなってるし。」
「いいんじゃない、それで。だって大学に進学してることおじさんもおばさんも喜んでるでしょ。それに大学言って楽しいって思ってるでしょ。」
「そうだね。」
「でも、どうしても気になるならさ。私に誇れる大学生でいてね。もう大人なんだし。」
「わかった。頑張るね。れい。だかられいも頑張ってね。」
「うん。」
「じゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
と鈴乃が言ったのを確認してから夕乃は通話を終了した。
鈴乃は、強い罪悪感に襲われた。今までの電話の時は、ただ話せなかっただけだけだった。けれど、今日の鈴乃は、二度も嘘を重ねてしまった。夕乃に心配をかけないための嘘だったけれど、嘘はよくないことだと鈴乃は痛感した。
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