(三)

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(三)

 今日は、夕乃の二十歳の誕生日だった。  夕乃の誕生会は、午後三時から始まった。鈴乃は夕乃に誘われて誕生会の一時間前から夕乃家を訪ねていた。夕乃の両親は、準備で忙しいことからか鈴乃が来ていたことに気づいていなかった。  「ねえ、れい。今日この服でいいかな。」 と夕乃はその場で一回転しながら鈴乃に聞いた。  「きれいだよ。大人っぽいシルエットで回るとふんわり広がるスカート可愛い。」  「そう。うれしい。」 と夕乃が言った。  「ねえ。髪結ってくれない。小学生の時やってくれたみたいにさ。」  「いいけど。それじゃどういう風にしていいかわからないよ。」  「カチューシャみたいなの。」  「わかった。クシとゴムとヘアピンある。」  「ある。どうぞ。」 と夕乃は、机にあったそれらのものを渡した。  鈴乃は、妹たちにやるようになれた手つきで編み込みを始めた。そして五分も経たないうちに完成させた。  「できたよ。」 と鈴乃は鏡を見せながら言った。  「ありがとう。やっぱり上手だね。」  「そうかな。」  「そうだよ。また、やってほしい。」  「いいけど、前にも教えたことあったよね。」  「私がやると時間がかかりすぎてしまうから。」  「そっか。わかった。」  「約束ね。」  「うん。」  今日は、なんだか久しぶりに鈴乃の方が大人だった。というより、二人は、友達になったばかりのときに戻ったみたいだった。子どもらしくなくて大人びた鈴乃が年相応の夕乃に合わせる関係に戻ったようだった。
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