第1章 消えていく日常

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 それでも、二人は、そろそろ帰ろうかと思っていた。そんなときに一人のクラスメートから声をかけられた。  「ねえ、せっかくだから夕乃ちゃんも鈴乃ちゃんも一緒に写真撮ろうよ。」  「いいの。」 と鈴乃は嬉しそうに言った。  「もちろんだよ。夕乃ちゃんは。」  「うん。いいよ。」  「撮ったら、後で送るね。」  「ありがとう。真友(まゆ)ちゃん。」 と夕乃が言った。  三人は、教室内で写真を撮った。真友も夕乃や鈴乃と同じ中学校を出身だったということで、高校に入学してから仲良くなった友人だった。  「すごいよ。夕乃ちゃんと鈴乃ちゃんは。私は、なんとなく推薦で専門に行くことで受験からも就職から逃げちゃったからさ。」  「そんなことないよ。夢がないと進学できないもん。それに推薦で行けたのはそれだけ、普段の成績が良かったからじゃない。私は、何もなかったから取りあえず4年生の総合大学に行ってから決めようと思ってるし。」  「そうかな。」 と照れたように真友が言った。  「そうだよ。この時点で夢を決めて進んでる真友ちゃんには遅れちゃってるよ。ねえ、そうだよね、れいちゃん。」  「私には、わからないけれど。今日まで生きて卒業できてるだけですごいことだと思うよ。」 と鈴乃が言った。  すると、二人は黙ってしまった。いつも心のどこかで子どもっぽいと思っていたのに、大人びたことを言われて拍子抜けしてしまったみたいだった。そして、自分たちは、もっと大人にならないといけないと思った。  「なんだかんだ、鈴乃ちゃんが一番進んでるかも。」  「そうだね。れいちゃんは、もう4月から社会人になるんだもね。」  「そうなんだっけ。」  「なに言ってるの。就職するんでしょ。」  「そっか。」 と鈴乃は悲しそうにつぶやいた。  それから夕乃と鈴乃は、他の友達とも一緒に写真を撮った。そして12時半を迎えて夕乃と鈴乃の二人は、校門のところへ向かった。  そして、夕乃と鈴乃は、卒業証書を両手で持って写真を撮ってもらった。  「撮れたよ。これでいいかな。」 と夕乃の母親がまた言った。  「ありがとう。よく撮れてるよ。ねえ、れいちゃん。」  「うん。ゆうちゃん大きくなったね。私の方が背高かったはずなのに。」  「そうだね。れいちゃん身長止まるの早かったからね。でもこの身長のれいちゃんかわいいよ。」 と夕乃が言った。  それから、それぞれ記念写真を撮った。
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