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鈴乃が家に帰ると、リビングには多くの親戚が集まっていた。鈴乃の妹たちも色違いのドレスを着ていた。あまりにみんなが着飾っているから、その雰囲気に圧倒されて入口のところで固まってしまった。
「もう、待たせちゃって悪いんだから、こんなところで突っ立ってないで、早く着替えて来なさい。服は部屋に置いてあるから。はやくしてよ、れい。」
「わかった。着替えてくる。」
と言って鈴乃は逃げるように部屋を出た。
「鈴乃ちゃんまだ帰ってこないの。大変ね。だから、大学行かせた方が良いって言ったのよ。」
「お姉ちゃんなら、さっきまでここに居たよ。おばあちゃん。」
「そう、気づかなかったわ。」
「そうだよ。お姉ちゃんママと話してたよ。」
「じゃあ、もうすぐ来るわね。」
と鈴乃たちの祖母が言った。
鈴乃は、ドレスを着るのに慣れているからか、一人でも着ることができていた。鈴乃も、妹たちのものより少し小さめのドレスが用意されていた。そのドレスは鈴乃にぴったりだった。
「お待たせいたしました。」
「まあ、似合うじゃない。」
と鈴乃の母が言った。
「そう。良かった。これ選んでくれてありがとう。」
と鈴乃が笑顔で言った。
「お姉ちゃん、きれい。」
と鈴乃の妹たちは声をそろえて言った。
二人の声は大きくてそこにいた全員に聞こえた。
「鈴乃さん来たのね。」
「鈴乃さん。どこにいるのかしら。」
「鈴乃さんの姿が見えないけど。」
という声も上がった。
「お姉ちゃんは、ここに居いるよ。」
と妹たち鈴乃の手を持っていった。
「どうしたの。見えないわよ。朱音ちゃんも和音ちゃんも手を上げてどうしたの。」
と鈴乃たちの伯母さんが言った。
そして、その声にこの場にいた多くの人が同意した。
「嘘でしょ。私ここに居るよね。」
と鈴乃が驚いたように言った。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんはいるよ。」
と妹たちが言った。
「本当は、鈴乃ちゃんの都合つかなくなって、誤魔化してるんでしょ。そんな茶番は要らないわ。ご祝儀おいていくから、帰ってきたら渡してあげて今日は帰らせてもらうわ。」
と鈴乃たちの伯母さんは言って席を立った。
それに続きほとんどの人が席を立ち始めた。鈴乃たちは何が起きたのか理解が出来なかった。鈴乃は確かに、ワインレッドのドレスを着て扉のところに立っていた。だから、鈴乃の姿が見えないという理由がわからなかった。
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