隣家の女

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 夜になると、白い蝶が彼の肩から隣家を目指す。彼女も娘も黒と白の蝶が舞うのを眺め、声なき吐息で夜が更けていく。朝になると白い蝶は彼の肩に舞い戻った。  このことは三人の秘密のはずだった。ところが数日して、彼の長男が蝶に気づいてしまった。  彼の長男は、隣家の長男より一歳年上、隣家の長女より二歳年上である。最近になって隣家の長女に好意を抱き、何か贈ろうとして、肩の黒い蝶に気づいた。不思議に思い、父に相談しようとして白い蝶に気づいた。  父から蝶の意味を聞き、蝶が見えるということは、自分にも黒い蝶を贈ることができると分かった。だが意中の隣家の長女は既に黒い蝶を受け取っている。当分は、あきらめるしかなさそうである。蝶が見えるようになったことは、男ふたりの秘密にしておくことにした。
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