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そんなお昼を過ごした。
その後何があったかというと、実は会長だった人を転校生が殴り飛ばしたらしい。それで食堂は大騒ぎ。風紀も出てくる騒ぎになったらしい。聞いた話を聞いたから正確にはわからないけど。
ともかく騒ぎが大きくなる前に逃げてよかった、と一安心。
さて、今は放課後。生徒がぞろぞろと廊下を歩き、部活に行ったり帰宅したりきている。
俺はというと、今現在壁に寄りかかって潤也を待っているところだ。
放課後に潤也は呼び出されて、今職員室にいるのだ。なぜ呼び出されたかは分からないが、きっと部活のことなのだろう。
一応潤也は部活に入っている、それも華道部。潤也の家にちなんだ部活。けれど、潤也は活動はしてない。ただ、先生が強引に誘って、潤也はそんなに乗り気ではなかった。部活に入る予定もなかったみたいだったし。あの時の潤也の顔は面白かった。普段あまり崩れないクールフェイスが見事に歪んでいたのだ。不機嫌そうな表情をあらわにする潤也を目の前に、それでもなお誘おうとする先生の精神には驚きものだった。
話は変わるが、この後は潤也と一緒に寮内にあるお店で食料品を買いに行く予定だ。週一に放課後買い物するのが習慣になっている。
潤也にはついてくる必要はないって、言われているけれど、いつも面倒かけてるし、買い物ぐらいは付き合わせてほしい。
静まった廊下に足音が響いた。そして、
「なぁ、お前!」
「ぅわっ!?」
突然近くから大きな声で叫ばれ、普通にビビったし、耳が痛い。
顔を上げれば、アフロに眼鏡をかけた人物。
・・・この人転校生じゃね?
噂のあのアフロ眼鏡だった。
「俺、菅生湊!湊って呼んでくれ!お前は名前なんて言うんだ?」
何かと思えば急に名前聞かれ、どもってしまう。
「三、沢春」
「春か、よろしくな!その前髪長いな!切らないのか?」
「えぇ、ちょっと、」
初対面で前髪のこと指摘して来たの君が初めて。
前髪を上にあげられ、でこが涼しくなる。
やめて、目小さいのちょっとコンプレックス、デコ寒いし。
で、この状況はどう言う状況・・・?
アフロ眼鏡に迫られる俺の図。
距離感バグってるって。
「切ったほうがいいぞ!」
「あ、うん、考えとく・・・」
そして謎の指摘。
前髪はどうでもいんよ。邪魔になったらきりますし。
逆に君はどうなんだい?それは天然の天然アフロ?それ地味に気になんだけど。
でも、だが、それより、
「俺に何か?」
「あ!俺生徒会に行かなきゃなんだけど生徒会ってどこだ?」
「生徒会?」
「和巳放課後来いって言われたんだ!」
生徒会か。その和巳って人は多分生徒会の関係者なのだろう。
昼の騒動もあったし、誘われたってことは彼は叱られにでもいくのか?それか気に入られたとか・・・?そうだとしたら、大丈夫か・・・?
それにしても生徒会か。風紀室の近くで同じ階の筈だけど、正確には分からない・・・
「多分3階。でもどこかわからん」
「なぁ春!俺まだここ来たばっかしだから、生徒会までついて来てくれないか?」
「え」
いや、俺わからないんだってば。2人で迷う羽目になるだろ。もし生徒会まで送ったとして、俺はどう帰るんだ。それに俺用事あるし、潤也待たないとだし。湊には悪いけど他を当たってもろて・・・
「お願いだ!俺たち友達だろ!」
いつの間にか昇進してたことに驚きだ。
それに小学生みたいなお願いの仕方されてもねぇ、さっき会ったばかりだし、簡単に揺さぶられねぇよ。
なんとか断ろうと言葉を考えていると、ポケットに入ってるスマホからピコンと鳴った。
確認すれば潤也からで、
『悪い、時間かかる。今日は買い物なし。先に帰ってろ。』
帰れと。
タイミングがいいのか悪いのか。
とりあえず『わかた』と言う返信に真顔のスタンプを付けて送っといた。
ちらりと、湊の顔を見てみる。未だにツヤツヤとした眼鏡をむけてくる。
それを見て心の中でため息ひとつ。
潤也との用事もなくなったことだし、しょうがないなーなんて思いながら言う。
「わかった、いこ」
「おう!ありがとな!」
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