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「お前ら、いい加減にしろ」
潤也は呆れたようにため息を付いた。
*
ホームルーム、担任真壁先生の視線がこっちに向いているような気がしていたが、目を合わせずに終え、教室から真壁先生出て行ったのを確認し、帰ろうとする潤也の後ろについて歩く。
「ひっつくな、歩きづらい」
「ごめん、でも、寮まで、我慢して、ッ!?」
「三沢くん。どこ行くの?」
見つかったァ・・・
背後でそう悪魔は言い、肩を掴んでくる。
どこって、帰るんだよ!家に!
「田中くん、この手を、離しては、くれ、ないか、っ!」
「それは、出来ないよ、僕の命が危ういからね・・・。それより、三沢くん、その手、離しなよ。樋崎くんが、困ってるだろう?」
そうか…?ちらりと潤也を見れば、怒ってはなさそうだけど。呆れが強そうな顔をしてる。ごめんよ潤也多分もう少しの辛抱さ。
悪魔もといクラス委員長の田中くんは、俺を潤也から引き離そうとしていて、俺は離れるまいと、潤也のしわひとつなさそうな、制服を後ろをぎゅっと握っている。
そしてついに、
「お前ら、いい加減にしろ」
俺を巻き込むなとでも言いたいのだろうか、呆れた様子でため息をつく潤也。
それに気を取られてしまった俺。
今だ!と引っ張った田中くん。
その瞬間、俺は潤也から身を離してしまったのだ。
「じゃあ、少し三沢くん借りてくね。」
「17時までには返却してくれ」
「わかった。」
「え、なにそれなにそれ」
俺は物じゃ無いんだが。
潤也が俺を置いて教室を出て行ってしまう。あぁ…
「それじゃ、行こうか」
「ことわる」
***
やはり行き先は理科準備室。クラス委員長こと田中はホスト教師の手下のようだ。
「田中くん、あのさ、少し遅く、歩いて、疲れた、腕ちぎれる」
「大袈裟だよ。こうなったのも三沢くんが逃げようとしたからなんだよ?」
振り返ることなく歩く田中。鬼畜者だ。
2度の逃亡を企んで、2度失敗した。その結果がこれだ。
逃げられぬよう手首をがっしり掴まれ、田中の長い足のペースに合わせて廊下を歩いている。
そんな姿をすれ違う人は奇異の目で見ているだろう。
はぁ…、潤也といい田中といい、背高いんだよ。170cm以上あることが羨ましい。
このままでは引きずられていくか、腕が引きちぎられるかの二択。
歩くペースが早すぎて息切れしてきた。
「も、ギブギブストップ」
そう言えばいきなり田中は立ち止まり、振り返る。
俺が少し体を屈め、息を整えていると、
「三沢くん、軟弱・・・だね」
とディスってきた。
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