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田中が俺のペースに合わせて歩いてくれて向かったけど、廊下曲がって歩いたところすぐに近くに理科準備室があった。
ギブし、軟弱と言われたのに。あとの距離は全然なかった。
扉に体を向ける。真壁先生が中にいるのだろう。注意を受けるだけか、嫌味を言われるか、雑用か雑用をさせられるのだろう。
嫌だなーめんどいなー帰りたい、逃げたい。
・・・果たして、田中はいつ戻るんだろうか、戻らないのか?
「田中、戻らないノ?」
「うん。まだ、戻らないよ。」
「ェ。あ、そう。」
まだって何?まだって。俺が部屋に入ったのを確認してから戻るとか?する前から俺信用されてないじゃん。
まぁとにかく、田中は戻らないというので、中にハイロウカ。はぁ・・・
そうして、ノックをしようとした時。
「・・・?あの、田中くん。」
「ん?なに?」
なにって、手よ。
右手でノックしようと思ったら重さを感じた。右手首は田中によってずっと手首を掴まれたままだったのだ。
「離してもいいんじゃ・・・?」
「まぁ、・・・一応、ね。」
一応って、他にも方法があるだろっ。このまま気にするなと?言いたいことはあるけどいわない。とにかくこの男はこの学校に慣れてやがる。なんか恐ろしい。
ガラガラガラ
「お前らいつまでも外でいちゃついてんだよ。デキてんのか?」
「コーヒー臭」
「そこなの・・・?」
ドアが開かれ真壁先生が登場。相変わらず眩しいやつだ。ホストのようだがホストではない、一応教師の真壁先生。
現れて早々、クッソ馬鹿なこと言ってきたけど、ドアが開いた瞬間部屋に充満しているであろうコーヒーの苦い匂いが鼻にきて、それどころではなく、思わず臭いなんて言ってしまった。
田中が横で呆れている。
「田中。ここまでご苦労だったな。」
「はい。約束通り連れてきたので、あの、あれを、」
あれ?
「あぁ、あれな」
何のことを話しているんだ?
真壁先生が部屋に戻り何かを探している。
「ねぇ、あれって?」
「ほらよ」
「ありがとうございます」
戻ってきた真壁先生は茶色い封筒を田中に渡した。
「何それ」
「わっ、三沢くん、こっ、こここれは」
「怪しいブツ?」
「違うよっ!」
なぜ慌てる?あ、思春期なアレ?
ジーッと見ていれば、田中は顔を赤くしあわあわする。
視線に耐えられなかったのか、
「じゃ、僕は、これで、さようならっー!」
走って帰ってしまった。
怪しいな。
「何渡したんですか?」
「秘密だ。これは男と男の約束だからな。」
つまり田中・・・やっぱ、男の子やんな。
「三沢は来たことだし、やるかー。」
「えぇ、やるって?・・・今から俺は何をさせられるんです?」
「なにって、─────雑用だ。」
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