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ゲームではルゥのいる国の場所について詳しく書いてなかったし、コロンも覚えていない。
だが、ルゥのいる国には大きなある特徴があった。
それは、周囲に人間以外の異種族しか通れない結界が張ってあることである。
そんなところは西にある魔王が住むという国しかなかった。
ちょうどコロンの住んでいた村はそのわりと近くにあったため、途中で疲れて歩いたものの、1時間ほどで着くことが出来た。
結界の前でコロンは立ち止まって上を見上げる。
結界は透明で一見、何も無いように見えるが、ガラスのように星や月の光を反射していた。
それをぼんやり見ながら、コロンの鼓動がだんだん大きくなる。
ここが本当にルゥの住む国だとして、ちょっと前まで人間だった自分が通れるのだろうか?
緊張しながら結界に触れると、何もないようにスゥッと指が通過した。
結界を通り抜けられることがわかった安堵と、自分が最早人間でないことの喪失感が混ざった複雑な感情が胸を支配する。
頭を振ってそれを追い出すと、コロンは深呼吸を1回して、結界に向かって歩き出した。
結界を通る直前に一瞬目をつぶったが、まるで何も障害物が存在しないかのように、コロンはいつの間にか通り抜けていた。
「よかった……」
ホッと気が抜けると同時に、ここがルゥのいる国であることを思い出す。
ここがルゥの生まれ育った国だと思うと、空気さえいとおしく感じた。
コロンは心ゆくままに両手を上げてクルクルと踊り出す。
「えーっと……ちょっといいか?」
しばらく陶酔して踊っていたコロンに、遠慮がちに声をかける者がいた。
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