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コロンが踊るのをやめて振り向くと、そこには頭に犬の耳を生やした壮年の男と、角を生やした青年が立っていた。2人とも甲冑を身につけている。
(獣人と魔族!?)
コロンは目を見開いた。前世ではもちろん、今世でも人間以外の異種族を見るのは初めてである。
「お前さん、ここにいてその格好ということは……元人間の不死者であっているか?」
獣人の言葉にコロンは頷いた。
「はい、そうだと思います」
不死者とは死んで蘇ったもの全般を指す言葉である。
正直、コロンは自分の死をきちんと認識していない。だが、心臓にナイフが刺さったまま生きているこの状態が異常なことはわかっていた。
そして前世の記憶が正しければ、自分は胸に刺さっているナイフに飾られていた魔石によって動いている、ということらしい。
その仕組みも、自分がどういう存在になったかもコロンには全くわかっていなかったが、自分が人間ではなくなったのは確かだった。
「この国への入国希望者で合ってるか?」
魔族の言葉に、コロンは力強く頷く。
「はい、そうです!」
獣人と魔族の2人は軽く目で会話した。
「それじゃあ、こっちに来てくれ」
魔族がコロンに手招きする。
コロンは素直に近づいて、どこへ連れて行くのだろうとワクワクした。
しかし、魔族は歩き出さず、獣人が彼から少し離れる。
訳が分からずコロンは首を傾げた。
「では、行ってくる」
魔族が獣人にそう言うと、コロンと魔族が光に包まれる。
コロンは咄嗟に眩しくて目をつぶった。
光が途絶え目を開けると、先程とは景色が一変していた。
「え、えええ!?」
コロンは驚いてキョロキョロする。
どこかの建物の中だろうか? レンガ造りの暖かな色合いの壁に真っ白な石畳の床、天井にはシャンデリアがある。
これだけならどこかのお城のようだが、壁の所々にアーチ状の窓口らしきものがあり、人々がせかせかと移動している様子はどちらかといえば役所や銀行を思わせた。
「ようこそ、ヒオン国へ」
魔族がコロンに笑ってうやうやしくお辞儀した。
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