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「先生のこと、知りたい?」  胸がギュッと締め付けられ、少しだけ目元が熱くなる。 「……彼、元気?」 「うーん、パッと見はね。いつもみたいにテキトーなこと言って、生徒ウケはいいよ」 「相変わらずヤンチャ教師なんだ。少しは落ち着けばいいのに」 「とか言っちゃって、唯香だってそんな先生が好きだったんでしょ?」  唯香は苦笑いをしながら俯いた。 「好きだったけど……私も若かったからかな。ヤンチャな姿が魅力的に映るんだよね。でも歳を重ねると、あのテキトーな言い回しが不安になる……ちゃんと向き合ってくれてるのかなって」 「なんかわかる気がする。やっぱり人生経験の差かな?」 「そんなに経験積んだっけ?」  二人は届いた前菜を口にして、その美味しさに思わず顔を見合わせる。 「たまの贅沢、いいねぇ」 「本当。すごく美味しい」 「でも滝川先生、なんか最近調子が悪そうなんだよね」 「そうなの?」 「うん、顔色悪くてボーっとしていることが多い気がする」  頭の中に浮かぶのは、お酒を飲んでそのままソファで寝てしまう彼の姿。唯香がご飯を作ると嬉しそうに平らげるのに、夜勤でいない日は何も食べないこともあった。 「……ちゃんと食べてるのかな。結構面倒くさがりで、ちゃんと見てないとお酒だけで寝ちゃうこともあったんだよね……」  すると志帆は呆れたように唯香を見た。 「唯香、まだ先生のことが好きなんじゃない?」 「あのねぇ、誰から別れ話を切り出したと思ってるの?」 「でも本気じゃなかったんでしょ? 先生が素直に受け取っちゃったから、好きだけど別れたんでしょ?」  図星過ぎて、返答に困ってしまう。 「……そうだとしても、あの時に答えは出たの。もう私たちは何の関係もないんだから」 「強がっちゃって」 「強がってないってば。とにかく、あれからもう半年だよ。あの人は何も言ってこないし、もうとっくに割り切ってるんじゃない? 結構ドライな面もあるしね」 「そうかなぁ」 「そうに決まってる」  なのに、こんなに美味しい食事の味がわからなくなるくらい彼のことが気になってしまう。  関係ないと口では言えても、心だけはどうにもならなかった。
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