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あの後は気づいたら保健室で寝ていた。
「創……」
ふと彼の名前を漏らしてしまうがそこに創はいない。
「あ、起きた? もう平気?」
代わりにいたのはいつもの四人でみんなが心配そうに俺を覗き込んでいる。
「開けてくれたの、おまえだよな。ありがと。ごめん、迷惑ばっか」
うつらうつらする頭の中にさっきの状況だけが浮かび上がる。
「迷惑とかじゃないけど。それよりおまえ熱あんじゃね?」
誰かのひんやりとした手がおでこに触れる。それだけで微かに震えてしまう自分が本当に嫌だ。
「悪い。びっくりしたな。でもやっぱり佐伯熱いぞ」
「大丈夫」
「嘘つけ。まあ、歩けそうなら今のうちに帰った方がいいかもな」
「……創に、謝らなきゃ。俺、勝手なことして、創を嫌な目に合わせた」
なんとなく鼻がツンとして泣き出したくなる。
「創なら『ごめんって伝えといて』って言ってすぐにどっか行っちゃったけど」
「俺のせいだ。俺のせいで……」
「おいおい泣くなって」
「泣いてねえし」
「いや強がるなって」
みんなの困惑がひしひしと伝わってくる。ほんとに俺は何をやっているんだろう。創にもみんなにも迷惑をかけて。やっぱりもっとちゃんと明るさで取り繕うべきだった。そうでもしないと弱い俺はみんなの邪魔になるだけなのに。
「誰も怒ってないし迷惑だなんて思わない。みんなただ佐伯のことが心配なだけ」
ぐるぐると嫌な気持ちが回る胸の中にそんな言葉がふと流れ込む。
「そゆこと。だからさっさとゆっくり休んで元気になれ。夏川にはそのあと謝ればいいじゃねえか」
なんでこいつら、こんなに優しいんだ。存在価値なんかない俺のためにどうしてここまでしてくれる。
ただ俺が一人で勝手に拒絶していたのか。優しさなんて偽りだと思い込み、自分もまた笑顔を偽った。世界はこんなにも優しかったのに。
「ありがと」
「この顔夏川に見せてやりてえ」
本物の優しさがあることを教えてくれて。
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