むゆうがく

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 アイラ。  私は夢遊学者になりたかった。  すべての人々に幸福の夢をあたえ、彼らの中心となる、姫となりたかった。  だけど、私のまえには、つねにあなたがいた。  あなたの描夢力をまえに、私の力など、微小なものだった。  あなたがいては、私は、姫にはなれない。  私はあなたを嫌いになりたかった。  だけど、あなたは私を友達として友好を示した。  あなたのみせる夢に、すっかりおぼれ、愛してしまった私がいた。  あなたの夢を愛した私は、自分の夢が嫌いになった。  私の作る夢生動物は……歪で、醜くて、くだらない下等な生き物にみえた。  あなたの作る動物たちのように、彼らは呼吸をしていない。  羽や足の動かし方もしらない。  あなたの作る夢生動物とくらべれば、私の物はただの「愚作」だった。  そんな気持ちをしっていたのか、あなたは私の動物を好きだといった。  あなたは私になりたいといった。  その言葉は私を苦しめる呪縛であった。  ひどく、侮辱されているとかんじた。  私が――嫌いで嫌いでしょうがない、この愚作たちを好き?  アイラはきっと、私を嘲笑しているのだ。  どれだけ背伸びをしても、私の才能の足元にも及ばない、下等な生き物。  たまには「褒めたふり」でもして、よろこぶさまでもみて、愉悦にひたるとしようか――。  きっとアイラは、そんな風に私を侮辱したのだ。  ほの暗い感情が胸をうずまき、私は気づけば走り出していた。
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