0人が本棚に入れています
本棚に追加
空虚な結末
ロケットが飛び立って数日が経った。既に地球は半壊し、残された人々の生存は絶望的だという。
船内放送でそう聞かされても、実感なんて湧かなかった。
ただ、もう黒原セイギはいないんだと思うと、腹の痛みが薄れた気がした。
ーー突如、警報が鳴る。
予想外の隕石が当たり、ロケットに穴が空いた、と。
次々と人が倒れていく。誰もが苦しそうで、泡を吹いている人もいた。
空も例外ではなく、はくはくと口を動かしながら膝をつく。
「黒原セイギは!? いるんだろう!? 彼ほど応急修理に優れたものはいない!!」
誰かの声が響いた。酸素が薄い。意識が白む。
これまでのことが頭の中を流れていく。
子供を堕ろしてから、死んだように生きてきた。殺したいほど憎い男の子供を殺そうと決意したのは、あんなにも簡単だったのに。腹の命を失うことがこんな虚無感を生むなんて、思ってもみなかった。子は男の子供でもあるが、空の子供でもあったのだ。
空も生き残る側に選ばれた人間だったけど、そんなのどうでも良いと思うくらいに生への興味を失ってしまった。生きているのは、ただの惰性。
それが今、終わりを迎えようとしている。息苦しい。それでも、腹が空になった瞬間よりはよっぽどマシだと思う。
遠くで悲鳴と怒号が聞こえる。人類は空の選択の末に滅亡するだろう。
後悔はなかった。どうでも良かった。
ただ、私の人生はこうやって終わるのかと……そう思った。
最初のコメントを投稿しよう!