甘い香りの誘惑

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「リア、はい、あーん」  ミスティやユリウスたちとは反対側にいたレインにマカロンを口元に差し出され、私は条件反射でそれを食べてしまってからはっとした。  ここは、お茶会の交流会会場で、周りに人がたくさんいるのに。 「ふふっ、リアは恥じらう顔もかわいいですけれど、できればその表情は、他の人には見せてほしくないですね」  甘い声で耳元で囁いてくるレイン。  なに、これ……いつもは、こんなに心臓がばくばくすることなんてないのに……。 「妹(ミスティ)よ、これって……ですよね?」 「うふふ、(クラウド)お兄さまだって、わかっていて(リアおねえさまの)虫除けを手伝っていらっしゃったでしょう?」 「まあなぁ。リア様の護衛を続けていれば、シンジュさんが依り代を女性に作り替えてもいいと言ってくれましたし。……伴侶がいない精霊だから、肉体の性別にこだわりがないとも」 「うふふ、よかったですわね。初恋相手が男の娘だと知って玉砕したと枕を濡らし、いっそ乙女に性転換できる宝玉を探すべきかと迷走していらしたお兄さまにとっては、悪い話ではございませんわね」  クラウドとミスティが、こんな会話をしていたことにも気づけないほど、私は実年齢に見合わない色気を醸し出すレインにドキドキさせられていたみたい。
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