甘い香りの誘惑

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甘い香りの誘惑

 お茶会のスタートを告げる挨拶も終わり、今回のお茶会が交流会を兼ねていることもあって、参加している子どもたちだけ、お茶会会場の端に設けられていた立食式の会場へと移動を促されたのでそれに続く。  これが標準ですと周囲に見せつけるかのように、ミスティをエスコートしながら移動するユリウス。  私もこの場に訪れた時と同じように、レインにエスコートしてもらいながら移動した。  ふわりと甘く美味しそうな香りが漂っている。  一口サイズの色とりどりの菓子が並んでいるテーブルからのようだ。 「ミスティ嬢は胆力があるようですね」  感心したように呟くレインの視線の先を辿ると、移動早々に令嬢たちに囲まれてしまっていた王子たちを救出に向かったユリウスを手伝って、ユリウスの婚約者として王子に共に挨拶をしている。  事前にミスティに聞いていたお茶会のシナリオでは、第一王子だけでなく、好奇心で迷い込んだ第二王子が交流会の時に姿を見せている。  隠しシナリオのミスティ編での攻略対象でもあったという。  実は、腹違いとはいえ、第一王子と第二王子の仲は悪くはない。  第二王子の母親の側妃や、姫を産んだ他の側妃が第一王子の母である側妃に、ことあるごとにチクチク嫌味を言ってくるのだ。  腹違いでも国王という同じ父を持つ子らは、それを反面教師として、いくら容姿が美しくても内面が伴わなければ醜悪に見えるのだと学んだため仲は良好だというのは、一つのルートしか知らない私もゲーム知識として知っていた。
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