甘い香りの誘惑

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「あら嫌だわ、なぜこの場に平民が混じっているのかしら?」  ミスティと、少し離れた場所にいる私へとチラッと視線を向けてこういうことを告げるテンプレ悪役令嬢の金髪縦ロールと悪意に満ちた笑みでクスクス笑っているおバカさんたち。 「一度くらいの子どもの失言で、あなたの親が管理する領地への流通を停止するほどわたくしの両親は狭量ではございませんが、あなたの行動や言動が、あなたと姓を同じくする家の出身である側妃様のお立場を貶めていることは御自覚なさったほうがよろしいと思いますわ」 「なっ!?」 「わたくし、おねえさまの敵は、ユリウス様の敵でもあると認識しておりますの。それに今は、この場に殿下もおられるのです。御自身やお家の品格を貶める言動や行動は慎むべきですわ」  ミスティに言いくるめられ、王子たちにも冷めた目で見られた縦ロール令嬢や彼女に同調していた子たちは、気まずそうにその場を離れて行った。 「ある程度、ふるいにかけられてよかったのではないでしょうか」 「そうね」  ミスティの勇姿を見守っている間も鼻孔をくすぐる美味しそうな匂いが漂っていて胃を刺激していた。 「美味しそうな匂いだから、おなかが空いてくるよな」  ファイも私と同じ気持ちだったみたい。 「ファイ、仮にも交流会なのですから、お菓子は殿下たちに挨拶を済ませてからにしましょう」  苦笑を浮かべたクラウドが、お菓子のほうへ足が向きそうになっていたファイの腕を引いて軌道修正させていた。
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