甘い香りの誘惑

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 前世で全ルートクリアしたミスティによると、金髪縦ロールことゲームでの悪役令嬢ロザリーナは、第二王子の母の姪にあたる。  このお茶会で第一王子に一目惚れして、王子たちと仲良く話しているミスティに嫉妬して、ついマウントを取ろうとあんなことを言ってしまった。  お茶会での第一印象が悪かったこともあり、その後王子たちには冷たくされ、第二王子の母からも恥さらしと疎まれ、他の貴族からも腫れ物を触るかのような扱いを受けることになり、やさぐれていった結果が学園編での一連の行動に繋がってしまうという。  でも、まだ学園編が始まるまで五年くらいあるわ。  今ここでなら、彼女たちもやり直せるはずよ。  だってまだ十歳前後。  まだ子どもなのに、一度だけのこんな失敗で明るい未来を閉ざされるなんて、そんなの私は嫌だ! 「リア?」  王子たちのところへ向かおうとしていたレインたちから離れて、私はロザリーナたちのところへ駆け寄った。 「な、なんですの?」  少し震えているのがわかる。  虚勢をはっていても、本当は後悔しているんでしょう?  だってあなたたち、今にも泣き出してしまいそうなくらい、瞳が潤んでおりますもの。 「お初にお目にかかります。私は、マリアティアーナ・フォレスティア・ルーチェフォティアと申しますの」  ミスティと一緒に練習して、ユリウスのお母様にも合格をいただいた公爵令嬢として気品を損なわない笑顔での挨拶。 「おなかが空いていると、人間は怒りやすくなってしまうそうですわ。みなさま、折角の交流会ですもの、お菓子をいただきながら、私とお話してくださいませんか?」  穏やかな口調で伝えられたはずですのに、なぜだかみんな涙腺が決壊してしまって……ど、どうしよう? 「あ、ありがとうございます。わ、わたくしどもでよろしければ、喜んで」  代表してロザリーナが涙を流しながらも微笑んでそう答えてくれて、それが合図になったように、他の子どもたちが泣きながら「ごめんなさい」と呟く声があちこちから聞こえてきたの。
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