嘘つきガール

1/1
前へ
/10ページ
次へ

嘘つきガール

 あれから私とキョウヤは恋人になった。  今日はクリスマス。  これで問題なく戦えそうだ。  私は大好きな人の声を聞きたくて電話を掛けた。 「ねえ、ニュース観た?」 「どうしたの?」 「サンタクロースがトナカイを操って暴れてるんだって」 「なにそれ、エイプリルフールは終わったよ?」 「うん、分かってる。クリスマスは今日で終わらせる」 「どういう意味?」 「いや、なんでもない。ねえ、私キョウヤのこと好きだよ」 「俺もコウメさんが好き」  ありがと。  私は電話を切った。  力が湧いてくる、好き好きパワーだ。  髪が金髪に変わる。瞳が青く光る。  力が湧いて来た。  エイプリルフールみたいに同時に攻めてこなくて良かった。  そのとき通信が入った。  胸元の機器を耳元へ。 「コウメ隊員、様子は?」 「サンタクロース一体です。私、これ嫌です。宇宙人もひどいですよ、サンタクロースなんて」 「エイプリルフールのときなかなか荒らされたし、今回はさっさと倒すべきだ。彼氏がまたフライドチキンないって言い始めるぞ」 「好き好きパワーあるので倒せますよ。力漲ってる状態を平常にしたせいでみんな私のこと金髪、碧眼少女だと思っていますし?」 「俺だってひょろひょろ首相だと思われてる。混乱を最小限にしながら侵略者倒すのは骨が折れる」 「そうですよね。彼氏には髪を黒染め、瞳をコンタクトってことにしました。けど、あの能力者が最も好き好きパワーを得られる相手を見つける装置まで見つかってしまうなんて。でも誰でも赤い糸見れるのは欠陥だと思いますよ」 「そうかい?」 「使うの難しすぎですから。これでキョウヤが一番だって分かったので転校の件はなしです」 「元々そのつもりはない。で、サンタクロースはどう?」 「もう倒しましたけど?」 「君の髪は何色かね?」 「あ、まだ金髪」 「両想いでそれを自覚して恋人になった。より強力な能力者になったわけだ」 「……。狙ってたんですね?」 「ああ」 「もう。でもキョウヤと恋人になれたのでいいですけど」  無線を切る。  首相の方も手伝うことにしよう。  私は力を使い切りたい。  キョウヤの前では髪を黒染めした女の子の姿なのだ。  決して、侵略してくる宇宙人と戦う能力者の姿ではいけない。 「私、なかなかな嘘つきガールだよね」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加