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エイプリルフール
俺はいい案が浮かばなかった。
もう四月になってしまった。
救いとしてはまだ一日であることだ。
新学期は六日とか七日とか八日とか、そんな感じだったはずだ。
スマホを見る。
何かいいことがないか、そう思ったときだった。
『ハンバーガー、パティの代わりにフライドポテトを挟む。セットメニューにはケチャップを付けたパティを提供! 今日だけの新感覚を味わおう』
……なにこれ。
『十円ガム、包み紙が小さいと思ったことは? 新発売の包み紙ビックでは、包み紙がなんと本来の三倍、ガムは本来の半分と大変包みやすい商品です!』
……え? はあ?
『これからホットスナックは野菜の時代? フライドレタス、フライドキャベツが登場!』
『自販機当たりが出たらもう一本、自販機に当初入っていた八十本をすべて手に入れた少年現る。なお、あまりの衝撃に母は顎が外れた模様』
『宇宙人と接触。未確認飛行物体は、宇宙人が持って来たカップ麺だった? そのカップ麺を今夜首相が実食か。緊張が走る』
『悲報。縁結び神社が諦めた。男性の運命の赤い糸、ただただ千切れている』
『うどん改名。ラーメンもどきになる。うどん派からラーメンもうどんもどきにしろと声が』
「ああ、エイプリルフールか。これいけるか!」
俺は真っ先にコウメさんに連絡した。
「何言ってるの?」
「エイプリルフールでした? みたいな」
「私、三月にお別れ会した。無理かも」
「ごめん」
「また意見聞かせて。私、どんな顔したらいいのかな」
事情を説明したら、なんて思ったけど。
ここで言うべきではないのだろう。
神様、どうか。
どうか、コウメさんが新学期上手く行きますように。
しかし、好機がやってきた。
翌日のことである。
「ねえ、ニュース観た? 首相が宇宙人と会談したんだって。今日もやるって! これ、使えそうじゃない」
「ええ?」
これって、もしかして。
「これにあやかって。こんな大変なことが起きてたら私の転校どころじゃないでしょ? 嘘つき呼ばわりされないかも?」
「そうだね」
嬉しそうなコウメさんの声で何も言えなかった。
へんてこが四月一日を超えてしまった。
これはきっと俺のせいだ。
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